靡かない
「じゃ、早速やりましょうかね」
「戦闘訓練!!」
今回はA組対B組の対抗戦。舞台は運動場γの一角。双方四人組をつくり、一チームずつ戦ってもらう。
ブラドキング先生の説明に、B組が笑顔を見せた。
「四人一チーム! 楽しそうだね!」
「楽しそう」
「……心操を加えると42名。A組が一名多い。この半端はどう解決するのでしょうか」
確かにそうだ。微妙に人数が足りない状況にふむ、と頷けば、同時に消太さんが口を開く。
「心操は今回二戦参加させる。A組チーム、B組チーム、それぞれ一回ずつ。A組の人数については運がなかったと思ってくれ。まあつまりだ、5試合中3試合は5対4の訓練となる」
運て……。
なるほど、ととりあえず納得。組分けはくじで行われた。
「わーい! カリンちゃんと一緒だー!」
「よろしく、透ちゃん」
「カリンさんがご一緒とあらば心強いですわ」
「よろしく、百ちゃん」
私は二番手だった。チームは青山くん、常闇くん、百ちゃん、透ちゃんの四名+私。比較的過ごしやすい人たちと同じになれたことにホカホカしながら、私は対戦相手である拳藤さんを見やる。
「神道。ミスコンでは負けちゃったけど、この試合は勝つよ」
にこやかに笑う彼女に「そっか」と笑えば、吹出くんが「でも神道驚異だよなぁー」と呟いた。
「かわいい顔してドシャドシャ攻める。個性わかんないしチートだよチート」
ああ、そこわかんないままなんだ。のほん、と微笑めば、「なにその笑顔」と突っ込まれた。それに「かわいいって言われたのうれしくて……」とはにかめば、「ギュン!!!」と擬音を発して吹出くんが倒れる。
「ボク、今日あなたのために戦います……っ」
「いやB組のために戦えよ」
拳藤さんの冷静な突っ込みが入れられた。
「ごめんな、神道。あのミスコン見て以来、B組連中すっかり神道のファンでさ……」
「ほんと? うれしい」
「ははは! 勘違いしないでくれよ神道さん! うちの拳藤に勝ったからってこの僕は君なんかに靡かないよ!!」
「物間くん元気ね」
わざわざこちらまでやって来た物間くんに言えば、彼はチッチッチッ、と舌を鳴らす。そうしてバッと腕を広げ、声高らかに言ってみせた。
「いかに凄い歌唱力を有していようとも、君は所詮A組。周囲に迷惑をかけるトラブルメーカーに他ならない! そんなトラブルメーカーに靡く奴など──」
「あ、物間くん、ゴミついとるよ」
「ひえっ!?」
ひょい、と近づき物間くんの髪についたゴミをとれば、共に物間くんは私から離れた。凄まじい速度で遠退いた彼に、私はとれたゴミを片手に首をかしげる。
「な、な、な、靡かないからな!!!」
渾身の力で叫んだ彼に、私は「そっか」と朗らかに笑った。
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