魔女ヒーロー | ナノ



合同訓練




「うおおお! やったるでえええ!!!」

その日のヒーロー基礎学は燃えていた。元気な透ちゃんを横目、更衣室で制服から戦闘服に着替えた私たちはグラウンドへと向かう。途中男性陣と合流すれば、興奮しているのだろう。皆口々に喋りだした。

「ワクワクするねー」

「葉隠、寒くないの?」

「めっちゃ寒ーい!!」

「根性だね……」

「私、冬仕様ー! カッコイーでしょーが!」

三奈ちゃんの言葉通り、冬仕様となった戦闘服を纏う面々が多かった。中には様変わりしない者もいるが、まあそこは個性だ。いろいろあろう。
かく言う私は殆ど変更はなく、ただスカートからキュロットスカートに(動くため)。腰元に特注したリング二つを提げるようになった。因みに本は片手に持っている。今度なにかぶら下げるよう頼もうかな……。

「入学時と比べると、だいぶ皆の戦闘服も様変わりしてきたな」

「飯田、それで夏耐え抜いたの凄いよな」

「確かに」

うなずく私。と、出久くんが勝己くんを見た。「かっちゃんも変えてる」と告げる彼は笑顔である。

「あー!? 文句あんなら面と向かって言えやクソナードが!!!」

「そのスーツ……防寒発熱機能付き? 汗腺が武器のかっちゃんにとってとても理にかなった変更で素晴らしいとおも」

「ほめてんじゃねー!!!」

相変わらずの仲である。
なんか久々見たな、このやり取りと思いながら本を捲れば、「カリンちゃんもスーツ様変わりしてるわよね」と梅雨ちゃんから微笑まれた。それに「結構動くからなぁ」と返せば、「ケロ」とかわいらしい鳴き声が返される。

「そういや神道の持ってる本、なんなんだ? 最近ずっと一緒だよな」

「え、あー、うん。大切なものだから……」

「中身どんなん?」

「や、それはちょっとまだ非公開というかなんというか……」

覗き込もうとしてきた上鳴くんを交わし、私はあはは、とからから笑う。が、それでも別に良かったらしい。上鳴くんは「そっか」とうなずくと、やがてぐっと親指をたててみせた。

「公開されたら即見せてくれよな!」

「……うん」

優しい子だ。
その優しさに感謝した。

「おいおい。まー、ずいぶんと弛んだ空気じゃないか」

ふと、声が聞こえた。振り返れば、ザッザッ、とこちらに近づいてくる団体が見える。

「お! 来たなぁ!! なめてねーよ! ワクワクしてんだ!!」

「フフ……そうかい。でも残念。波は今、確実に僕らに来ているんだよ。さあ、A組!! 今日こそシロクロつけようじゃないか!!!」

現れたのはB組の面々だった。
そう。今日の演習はなんと、彼らと対戦するという内容なのだ。ザ、初めての合同訓練。これにB組物間くんは大興奮しているらしい。みてよみてよと、文化祭のアンケートまで取り出しはじめた。

「入学時から続く君たちの悪目立ちの状況が変わりつつあるのさ! そして今日! AvsB! 初めての合同訓練! 僕らがキュ!!」

「黙れ」

「ものまぁ!!!」

突如現れた消太さんにより物間くんが完封された。捕縛布で首を縛られた彼は、ピクピクと地に倒れ伏している。

「今回、特別参加者がいます」

「しょうもない姿はあまり見せないでくれ」

二人の担任の言葉に、わっ、と全員がざわつく。

「特別参加者?」

「倒す!!」

「女の子?」

「一緒に頑張ろうぜ!!!」

そんな声たちと共に、特別参加者は私たちの前に現れた。ざく、と地面を踏みしめた彼を見た瞬間、尾白くんと出久くんが「あ」と目を見開き口を開ける。

「ヒーロー科編入を希望してる、普通科C組。心操人使くんだ」

消太さんの紹介に、またも周囲はざわめきだした。主に彼の身に付けるサポートアイテムについて意見が飛ぶ中、消太さんは心操くんに一言挨拶するよう告げる。心操くんはそれを受け、一度視線を下にさげてから上を向いた。

「何名かは既に体育祭で接したけれど、拳を交えたら友だちとか……そんなスポーツマンシップ掲げられるような気持ちのいい人間じゃありません。俺はもう何十歩も出遅れてる。悪いけど必死です」

心操くんの視線が、出久くんへと向けられる。

「立派なヒーローになって、俺の個性を人のために使いたい。この場の皆が超えるべき壁です。馴れ合うつもりはありません」

そこで、彼の挨拶は終わった。皆が口々に「ギラついてる」、「引き締まる」という声をあげる中、物間くんだけが「いいね、彼」と笑っていた。

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