こぼれる涙
「ほら、飲み」
ガコン、と音をたてて自動販売機に落下した缶ジュース。それを取り出し、手渡してくるホークスさんに大人しく従いジュースを受けとれば、コーヒー缶を手にしたホークスさんがよいしょ、と隣に座ってくる。
「……止めたの怒っとる?」
ゆるりと横に首を振った。「そっか」とホークスさんはコーヒー缶に口をつける。
「……ホークスさん」
「ん?」
「助けられたんです……」
ぽつりとこぼせば、ホークスさんは一度無言に。すぐに前を向きながら、「うん」と返事を返してくれる。
「私が個性を使えば、例え世間に狙われることになったとしても、救えたんです。ナイトアイさん、助けられたんです。蘇らせること、できたんです」
「……うん」
「でも、私、考えました。自分の未来が危うくなるのが怖くて、一瞬考えました。自分を犠牲にしてまで助けなくてもいいんじゃないかって。皆の期待に応えなくてもいいんじゃないかって……私、最低です」
「……そんなことなかよ」
ゆるゆると首を振る。つん、と痛む鼻に、目尻に涙が浮かんだ。
「ヒーローは困ってる人を、傷ついた人を助けるのが仕事なんだと、母さんたちは笑って言ってました。どうせヒーローになるなら、私も母さんたちのようになりたい……」
「……そこに死人まで含んだら辛いだけよ」
「でも……! 私には力が……!」
「カリンちゃん」
するりと、ホークスさんの手が私の頬を撫でる。
「死人は蘇らない。人を生き返らせる個性なんてあったらいけん」
「でも、ホークスさん……っ」
「カリンちゃんは例外やった。わかるね?」
ポロポロと涙をこぼせば、後ろ頭をそっと引かれ、ホークスさんに抱き締められた。
「辛い気持ちはようわかる。けど、やからって自分を犠牲にしたらいかん」
「っ……」
「……人の死を乗り越えていくんも、ヒーロー……いや、人生やけん」
わっ、と溢れ出そうになる嗚咽を噛み締め、私はホークスさんにすがり付く。ホークスさんはそんな私をあやすように背を撫でながら、「たくさん泣き」と一言。
「今は、泣いてもええんやけん──」
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