魔女ヒーロー | ナノ



可能性の話



「ああ、カリン! 無事でよかった!」

バスで寮へ帰ると、おじさまが根津さんと共に待ち構えていた。皆がいる中ぎゅーっと抱き締められる私は、「ちょっ、おじさま!」と彼の胸板を叩きながら反発する。さすがにこんな公衆の面前で抱擁は……恥ずかしくて照れる。

「あ、すまない。つい……怪我をしたんだってね。大丈夫かい? また傷痕残るんじゃあないだろうね……」

「大丈夫。傷痕は残んないって。後遺症とかもないし安心して」

「それなら良いんだが……」

しぶしぶと頷いたおじさまは、視線を私の後方へ。じっと事の成り行きを見守っているクラスメイトを見て、たらりと一つ汗をかく。

「あ、あー……皆、仮免試験お疲れ様! 頑張ったみたいだね! いろいろあったようだが、無事で何よりだよ!」

「……オールマイト先生って本当に神道の叔父なんですね……」

「んん! そこ突っ込むか!」

冷静に突っ込んだ上鳴くんにおじさまは額を押さえた。

「それはそうとカリンちゃん、緑谷くん。二人ともが敵に狙われたと聞いたよ。緑谷くんは無傷のようで安心したが、敵になにか言われたりしなかったかい?」

「え、僕は特に……もっと知りたい、話したいなとか言われたくらいで……カリンちゃんは?」

「私は、えーっと……死柄木が待っているから一緒に帰ろう、と……」

「え、それ大丈夫なの!?」

驚く出久くんにうーんと悩めば、ぽん、と頭に手が乗せられた。大きなそれは隣に立つおじさまのもので、私はきょとんと彼を見る。

「おじさま?」

「大丈夫。カリンのことは私が守るから」

にっと上げられた口角に、一度目を瞬いてから「うん」と笑う。元ナンバーワンがこう言ってくれるのだ。心強くて頼もしい。

一通りの説明を終え寮内に戻ると、各自部屋へと散っていった。私はリカバリーガールに傷の具合を見せないとならないため、おじさまと二人医務室へと向かう。

「……ねえ、おじさま」

「ん? なんだい?」

周りの生徒の視線をちらちら受けながら、私はおじさまに目を向けた。

「私の個性のことなんだけど……」

「個性?」

ぴたりと、おじさまの足が止まる。流れるように停止した私の足は、自然とおじさまの横に並んだ。

「生き返ってからかな、個性が少し、強くなった気がするんだ。出現するナイフの数も増えたし、風の力も増した。重力を展開する幅も広がったし、なにより、治癒の力が格段に上がってる気がするの……」

「それは、訓練の賜物とかではなく……?」

「うん……」

下を向き、両手を握る。そのまま、ちょっと怖く感じながら、私は本題を話そうと口を開けた。

「わ、私ね、それで気づいたの。もしかしたら、この個性には可能性があるんじゃないかって……」

「可能性?」

「……死んだ人を、生き返らせる可能性」

ぴくり、とおじさまが震えた。ちらりとその顔を伺えば、彼の顔が驚愕の色に染まっていることに気がつく。
そりゃ驚くわな。冷静に考え、両手を見た。

「死んだ人をって……そんなこと、本当に可能なのかい……?」

「や、まだわかんないんだけど、でも、出来るかもって……じ、自信はあるんだよ! 私自身が経験してることだし、なにより、植物とか生えてきたし……」

「え? 植物? なんの話? いや、そうでなくともいくらそれは……無理があるんじゃないかなぁ」

「む、無理、なのかな……」

「うーん。私は不可能だと思うよ。そういう奇跡的な能力を持つ個性持ちって前例にないし……あー、でもカリン自身のことが前例ってことになるのかなぁ……」

どうなんだろ、と悩むおじさま。とりあえずとその足を動かすよう言えば、「あ、そうだったね」と彼は素直に歩き出した。

「まあ、なにはともあれ、あまりひけらかしていい力じゃないのは確かだね。もしそれが可能になったとしても、絶対に乱用しちゃいけないよ」

「う、うん、わかってる」

ぽんぽん、と頭を撫でられこくこくと頷く。おじさまはそんな私に、優しく微笑んでくれていた。

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