魔女ヒーロー | ナノ



通院




「一棟一クラス。右が女子棟。左が男子棟と分かれてる。ただし一階は共同スペースだ。食堂や風呂、洗濯などはここで」

消太さんに説明されるまま、三日で出来たという寮内部を見て回る。途中峰田くんの問題発言があったが、それは消太さんの一喝で見事に封じられていた。

「わー! カリンちゃんお隣さんやね! よろしくね!」

「うん。よろしく、お茶子ちゃん」

私の部屋は四階の女子棟になっていた。隣は今の発言でわかる通りお茶子ちゃんだ。猫がうるさくしないか心配ではあるが、うちの子は頭も礼儀もいいため大丈夫だろうと一人ごちる。

皆と別れ入った部屋には、大量の段ボールが積み重なっていた。それらを魔法の個性で荷解きしながら、私はすり寄ってくる白猫、シロをよしよしと撫でる。

「すぐ終わらせるから待っててねぇ」

にへら、と笑えば、シロは「にゃあ」と愛らしく鳴いた。


◇◇◇◇◇


「──神道、荷解き終わったか?」

荷解き開始から三時間。消太さんが部屋を訪ねてきた。それに答えるように猫を抱え扉を開ければ、消太さんの視線が私の腕の中へと注がれる。

「しょ……相澤先生!」

「病院の検査の時間だ。オールマイトさんが外で待ってる」

「え、もうそんな時間ですか!? やば!」

慌てて簡単な用意を済ませ部屋を出れば、消太さんが小さく「ねこ……」と呟いた。なので扉を開け、座り込んでいたシロを抱えて消太さんに手渡す。

「どうぞ。うちの子、気がすむまで堪能してください!」

「……ああ」

大人しいシロに安心したのか、そろそろとその頭を撫で出す消太さん。そんな彼と共に外に出れば、そこには彼の宣言通りおじさまの姿があった。おじさまは随分と待っていたのだろう。にこやかに手を振りながら「や、遅かったね」と微笑んで見せる。

「遅くなってごめんなさい」

「いいんだよ。急いでくるより体にいいしね。それより、はやく病院に向かおうか。相澤くんは……ってあれ? 何でシロ抱えてるの?」

「いや、神道に渡されて……つい……」

反射的に受け取ったのかと内心呟く。消太さんはそんな私に「検査結果は控えてこいよ」とだけ言うと寮内に戻っていった。なので私はおじさまと共に病院に向かうことに。

病院につくと、すぐに検査が開始された。軽い問診を受け、心電図を取り、測定を行う。すべての検査が終わった時にはもう日も暮れていて、私が寮に帰る頃には皆が共同スペースに集まり団欒していた。

「あ、カリン! 何処行ってたの!?」

私の帰宅にいち早く気づいた三奈ちゃんが駆けてくる。

「ん、ちょっと病院に。暫くは通院して検査しないといけないからさ」

「そっか。幾ら後遺症がないからって一回死んでんだもんな」

「うん」

こくりと頷き、皆はなにをしていたのか訊ねる。すると、返ってきたのは部屋王決定戦という単語。なんか妙なパワーワード出てきたなと思いながら、砂藤くんが一位になったことを聞かされる。

「砂藤のシフォンケーキめーっちゃ美味かったんだよ! カリンも今度食べてみなよ!」

「いいなぁ。私甘いもの大好き……」

「お、まじか。じゃあ今度改めてケーキ焼いてやるよ!」

「ほんと!? わー! うれしい! ありがとう、砂藤くん!」

パチパチと手を叩き、喜びを露にする。砂藤くんはその反応が照れ臭かったのか、若干赤くなりながら後ろ頭をかいていた。

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