正規の活躍
「とりあえず一年A組、無事にまた集まれて何よりだ」
消太さんの言葉に、私は周りのクラスメイトたちを見渡した。誰一人欠けることなく揃った生徒たち。
ここに帰って来れて本当によかった。生きててよかったと、胸を撫で下ろす。
「みんな許可降りたんだな」
「私は苦戦したよ……」
「フツーそうだよね……」
「2人はガスで直接被害あったもんね」
「無事集まれたのは先生もよ。会見を見たときはいなくなってしまうのかと思って悲しかったの」
「うん」
「……俺もびっくりさ。まァ、色々あんだろうよ。さて……! これから寮について軽く説明するが、その前に一つ」
消太さんが手を叩き、注目を集めた。これから何を話されるのか、知らない私たちに緊張が走る。
「当面は合宿で取る予定だった仮免取得に向けて動いていく」
「そういやあったなそんな話!」
「色々起きすぎて頭から抜けてたわ……」
「大事な話だ。いいか、轟、切島、緑谷、八百万、飯田……この5人は、あの晩あの場所へ、爆豪と神道救出に赴いた」
しん、と場が静まった。
なんのことだと一人首をかしげる私を、消太さんがちらりと見る。
「その様子だと行く素振りはみんなも把握していたわけだ。色々棚上げした上で言わせてもらうよ。オールマイトの引退が無けりゃ俺は、爆豪、神道、耳郎、葉隠以外全員除籍処分にしてる」
「!?」
「彼の引退によって暫くは混乱が続く。敵連合の出方が読めない以上、今雄英から人を追い出すわけにはいかないんだ。行った5人はもちろん、把握しながら止められなかった12人も、俺たちの信頼を裏切ったことには変わりない」
ほう、と納得。そんなことがあったんだと内心頷いていれば、ん?、と自分自身に違和感を感じた。私、なにか大切なことを忘れているような……。
「正規の手続きを踏み、正規の活躍をして、信頼を取り戻してくれるとありがたい。以上! さっ! 中に入るぞ、元気に行こう」
いや、元気に行くのは無理だろう。
完全に落ち込んでしまったクラスメイトたちを横、私はひそりと考える。
なにか言葉をかけたいが、かけれない。いや寧ろ私は多大なるご心配をおかけした立場だ。話せることなどなにもない。
「神道、ちょっとこっち来い」
一人悶々と悩んでいると、名を呼ばれた。不思議に思い消太さんに駆け寄ると、怪我の具合を尋ねられる。
「あれからどうだ? 体調に変化はあるか?」
「え、いえ。良好です。一度死んだのが嘘みたいに元気ですよ。リカバリーガールも褒めてたくらいです」
「そうか。前例のない個性問題だ。なにか問題出たらすぐ言うんだな」
「はい、ありがとうございます」
えへへ、と笑えば、ポンポン、と頭を撫でられた。消太さんにも心配かけたんだなぁ、なんて思っていれば話がついたらしい。なにやら茶番を繰り広げていたクラスメイトたちがわらわらと集まってくる。
「あ、相澤先生が神道甘やかしてる!」
「甘やかしてない。それよりさっさと行くぞ。時間は有限だ」
言って歩き出す消太さんに、素直じゃないなぁ、と心の中で微笑んだ。
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