久々の登校
「神道!!」
「あ、轟くん。おは……むぎゅっ!?」
久しぶりの登校日。包帯を巻かれた腕や首元を多少なりとも気にしながら轟くんとの待ち合わせ場所に向かった私は、なぜかそこで熱い抱擁を受けることになってしまった。「とと、轟くん!?」とすっとんきょうな声をあげれば、少しの間を置き、「心配した……」という言葉が返ってくる。
「合宿で、お前いなくなるし、血とかすごかったし、放送ではボロボロだったし、死んだって聞かされたし……」
「お、おう、おう、ごめん……」
「……心配した」
ぎゅうっと抱き締められる体にはわわ、と赤くなる。道行くおばさまが「あらあら」と微笑んでいる姿にさらに羞恥心をかきあげられた時だ、ドサッとなにかが落下する音が聞こえてきた。それになんだなんだと音の発生源を見れば、ツンツンとした目立つ頭が視界の中に写り込む。
「か、かか、勝己くんー!」
思わずその名を呼べば、ハッとした彼はズカズカとこちらへ。落ちた荷物を気にすることもなく私と轟くんを引き剥がし、私を背後へ。守るように立ちながら、「おいテメェ!!!」と轟くんに向かい大声を荒げる。
「こいつに妙な真似してんじゃねえぞ!! ああ゛!!?」
「爆豪……なんでここにお前がいんだ?」
「うるせえ!! なんだっていいだろが!! おいクソ女!! 行くぞ!!!」
「は、はひっ」
荷物を拾った勝己くんに腕を引かれるまま、私は足を動かした。轟くんが追うように着いてくるのを尻目、不機嫌な勝己くんへと視線を向ける。
「でもほんと、なんでここにいるの、勝己くん……」
「うるせえわりぃか!!!」
飛んできた怒号に、ひえっとなった。
◇◇◇◇◇
「──あ、あー! カリンちゃん! カリンちゃんだぁああああ!!!」
学校に着いてすぐ、出久くんが両手を広げ駆けつけてきた。パッと抱きつきパッと離れた彼は、私の肩を掴みながら「心配したんだよぉおおおお!!!」と大号泣してみせる。
どうした出久くん。なにがあった。
苦笑いしながら「どしたの、出久くん?」と問いかける。
「ど、どしたじゃないよ! あんなにボロボロですごい出血だったしほんとに僕もうカリンちゃん助からないかと思ってほんとに、ほんとに、ほんとに!!!」
「お、おう、心配かけてごめんよ……ありがとう……」
「うわぁあああん! どういたしましてぇええええ!!!」
滝のような涙を流す幼なじみにあれまぁ、なんて思っていると、騒ぎを聞き付けた他のクラスメイトも団欒を中断してこちらへと駆けてきた。皆口々に「神道! よかった!」「怪我大丈夫かよ!?」「カリンちゃぁああん! 心配したんだよぉお!」と心配にまみれた言葉をかけてくれる。
「ご、ごめんね、皆。心配かけて。でもこの通り平気だから……出久くんそろそろ泣き止んでー!」
「はは、まあ、なんだかんだ緑谷は神道のこと大好きだからな。今回のこと相当キたんだろ」
「私たちも心配したのよ。カリンちゃん、ほんとにボロボロだったから、もうダメかと思って……」
悲しげに瞳を伏せた梅雨ちゃんに、確かにあの時は死んでたわ、と思考を巡らせる。本当に、あの状況でよく復活できたな自分……。
「怪我の後遺症とかはねえのか? 完治するって?」
「うん。治るのは治るって。後遺症も、個性働いたからないらしい。けど、傷跡は少しだけ残っちゃうみたいで……」
「傷跡って……」
眉尻を下げる上鳴くんに「チェーンソーでやられたところがちょっとね」と苦笑い。皆が暗い顔になるので、「で、でも大丈夫だよ!」と両手を振る。
「今回の事件で後遺症が残らない方が、寧ろ生きてることが奇跡って言われちゃったくらいだし、傷跡くらいなら隠しようはあるし!」
「ですが、女性の体に傷が残るというのはとても……」
「傷跡美少女も捨てがたいけどな」
「峰田黙れ」
安定の峰田くんにちょっとほっこりした。
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