雑記帳 冬だ!破妖だ!懇親会B




in浮城

いよいよ盛り上がる懇親会。
奪還チームの危機を露木茂ほどにも知らず、呑気にカラオケにいそしむラス一派。


セスラン「♪いつまでも二人こーのまーまーーーー!!」
リーヴィ「………」
セスラン「♪強く抱きしめてふらいあうぇーーーーーー!!」
衣於留「………(汗)」
サティン「セスランって高音出せたのね……なんだか、イメージが……」
セスラン「♪輝いてるきーみーの、ひとおみーーーーー!!」


良い気分で歌っているセスラン。そこへ、天井から落ちてくる未羽。

セスラン「♪僕のす」
未羽「ラエスリール、助けて!」

床に落下して開口一番に叫ぶ未羽。彼女の羽は千切れ、全身が砂にまみれている。驚く一同。

ラス「お前は、スラヴィエーラの護り手の……未唯」
未羽「未羽よ!」
ラス「すまない。どうしたんだ、その傷は」
未羽「スラヴィと、ついでに二名が上級魔性に捕まっちゃったの!」
セスラン「それは新春から縁起が良いですね。」
歌を中断されたセスランが笑顔で応じる。

未羽「こんなことを言えた義理じゃないのはわかってる!でも、このままじゃスラヴィが危ないのよ」
ラス「マイダードたちがいるのだろう……?」
未羽「だめよ、あいつら全然頼りにならないし!この状況を楽しんでいる節すらあるわ!」
セスラン「逆に頼もしいではありませんか」
未羽「それは、あっちに柘榴の妖主がいるからよ!知り合いだから殺されない、なんて楽観視してるの。そんなに甘いお方じゃないのに!」
主人以外はどうでも良いと考える護り手の言葉が、カラオケボックス内に響いた。

セスラン「どうするんですか、ラス?あの三人を助ける理由は、あなたにはありませんが」
ラス「彼らは友人だ。濫花のことでは迷惑をかけたし……(というか濫花の世話を頼んでおいたはずだが、いつの間に?)」
未羽「柘榴の妖主は、あなたの言うことなら聞くはずよ」
サティン「……行ってあげなさいな、ラス」
ぼろぼろになった未羽を見て、辛そうな顔をするサティン。
サティン「主人のために、ここまで……」
リーヴィ「追っ手にやられたの?上級魔性から、よく逃げてこられたわね」
未羽「サティンの護り手が助けてくれたの」
サティン「え」
セスラン「そう言えば、先ほどから鎖縛の姿が見えませんね?」
未羽「実は、さっき……」


──10分前──

セスラン「次は私の歌う番ですね」
サティン「頑張って!」
衣於留「ほんとにこの選曲でよかったの?」
鎖縛「おい、おれはちょっと外の空気を吸ってくるぞ」
リーヴィ「これっていつの歌なのかしら」
鎖縛(誰も聞いてねえ……)


浮城の外に出て、白砂原の向こうを眺める鎖縛。
うーん、と伸びをした時、遠くの方で爆炎が上がるのが見えた。黒い塊が踊っているのがいくつも見える。
鎖縛(ん、あれは……)
見れば、一体の妖鬼を、三体の妖貴が足蹴にしている。

黄呀「お前、どこへ逃げるつもりだったの?」
家井「私の脚力を舐めるな」
内梨「無駄な忠誠だわ。どうせならもっと綺麗な主に仕えれば良かったのに。我が君みたいに」
未羽「スラヴィを侮辱しないで!」
砂の上に踏みつけにされている未羽の目前に、悠然と着地する鎖縛。

鎖縛「よう。内梨」
内梨「お、お前!」
鎖縛「妖鬼一体に三人がかりか。原作での清純キャラが台無しだぞ」
内梨「うるさい!この子を連れて帰れば、我が君はご褒美に、また女性の姿になってくれるはずだもの!」
鎖縛「昔はよく女のあいつと一緒にいたぶってくれたっけな。今こそその雪辱晴らしてやる」
家井「おのれ、邪魔立てするか!」
鎖縛「安心しろ、おれは柘榴の妖主の味方じゃない」
黄呀「!」
家井「なんだと。それほど酷似した容貌を持ちながら……」
鎖縛「そのせいで憎んでいる、と言ったら?」
黄呀「……では、お前は配下ではないのか」

困惑したように、内梨と鎖縛を交互に見つめる黄呀たち。
内梨(そうだ!我が君を嫌っているこいつらが、あたしの味方をする義理はないんだわ!)
下手をしたら三対一になりかねない状況に気づき、後ずさりする内梨。

鎖縛が黒衣を一閃させると、背後から漆黒の鎖が飛び出した。
それは、油断した妖貴たちの体に巻きつき、がっちりと捕らえる。

内梨「しまった!」
三人一緒にもがいても、息が合っていないため動きがバラバラで、うまく外れない。

鎖縛「必殺!」
腕を振るうと、三人の体は上空高く持ち上げられた。

鎖縛「ネビュラ・チェーン!!」

内梨「きゃあああああ!」
黄呀「ヒャッホーーーーーーーーー!」
家井「イエエエエエエエイ!!」

どさくさに紛れて変な悲鳴を上げながら、お空の彼方まで吹き飛ばされていく妖貴たち。
遠くの方で、キラーンと黒い光が瞬いて見えなくなった。
鎖を巻き上げた鎖縛は、「ふっ」と呟いて黒い前髪を撫でる。

鎖縛「見たか、これがおれの小宇宙の力」
未羽(コスモって……)

砂の上からよろよろと立ち上がる未羽。
鎖縛「おいどこへ行く」
未羽「い、行かなきゃ……スラヴィ、が……」
鎖縛「助けてやった礼も言えんのか。躾のなってない護り手だな」
未羽「あ、りがとう……でも、今は……早く、行かなきゃ、ラエスリールに、助けを……」

己の命を喪う事も厭わず、主を護ろうとする少女。
嫌な記憶を思い出してしまい、顔を顰める鎖縛。

未羽(え?)

ふっと体が楽になり、驚いた顔をする未羽。傷口があらかた塞がっていた。
鎖縛はそっぽを向いたまま告げる。

鎖縛「とりあえず、応急処置だけした……ラエスリールたちなら、地下のカラオケボックスで馬鹿騒ぎしてる。早く行け」
未羽「ど、どうして」
いやいや護り手をしている上級魔性の思いがけぬ善意に、戸惑いを隠せない未羽。
遠くを見つめたまま答える鎖縛。

鎖縛「別に。……敢えて言うなら、つぐない、か」
未羽「まっどっに〜、にしぃ〜びが〜。あたる〜へやは〜♪」
鎖縛「さっさと行け!!」

猛スピードで転移門の方角へ飛んでいく未羽。

未羽「いっつっもっ、あな〜たの〜。匂いがする〜わ〜♪」←ドップラー効果
鎖縛(余裕あるじゃねえか………)



──現在──


セスラン「そんなことがあったんですか。というかあなた、歌うまいですね」
リーヴィ「歌まで再現したわけないでしょ」
未羽「うん、あそこでボケないとやっぱり芸人としては……。じゃなくて」

一呼吸おいてから、サティンの方を向く未羽。

未羽「そういうわけだから、後であの人にお礼を言っておいて。もちろんあたしからも言うつもりだけど」
サティン「え、ええ……」
ラス「闇主の奴、あれほど人に迷惑はかけるなと言ったのに」
セスラン「あなたがそれを口にしてはいけませんよ」
ラス「………」
セスラン「生きている以上、誰にも迷惑をかけずに過ごす事はできません。大事なのは己の罪を自覚することです」
ラス「はい……」
セスラン「そして、反省したら償うことです」
未羽「愛を〜つぐな〜えば〜。別れ〜になる〜けど〜♪」
セスラン「それはもういいですから。早く行ってらっしゃい」
邪羅「おれも行くよ。つーか、今までおれの存在も忘れてただろあんた」
セスラン「はははは」



in虚空城ホール


不穏な空気の流れるホール内。
その中央に引きずるように連れて来られ、獲物として視姦されている奪還チーム。
マイダードとオルグァンはスラヴィを庇おうとしていたが、当のスラヴィは彼らを押しのけて前に出ようとする。
結果として三人は同じ動きを繰り返しているだけだった。

緑「さて、この見目麗しい子羊たち、どのように料理致しましょう?」
白「そうじゃな……」
緑「柳の鞭でぶちましょうか?」
金「いや、それは気の毒。後ろの山に捨てるべきだ」
白「それも酷じゃ」
緑「では、背戸の小薮に埋めましょうか?」
紫「いやいやそれも気の毒だ。ここはやはり、象牙の船に金の櫂」
金「月夜に海に浮かべれば──」
闇主「流されて死ぬだろ普通」

柘榴の妖主のツッコミに、どっと笑いが起こる。
普段は仲が悪いのに、こんな時だけ妖主たちの息はぴったりだった。

九具楽「ネタが一段落したところで、我が君」
闇主「うん?」
九具楽「このような雑魚は、摘み出せば済むこと。ホールを下賎な人間の血で汚すこともありますまい」
闇主「満足なボケも出せない奴は黙ってろ」
九具楽「……」
再び落ち込む九具楽。

闇主「だが、そうだな。このまま殺すのは確かに味気ないな」
柘榴の妖主の目が奪還チームへと向かう。

闇主「お前ら、今から何か面白いことをやれ」
スラヴィ「は?」
闇主「おれたちを笑わせることができたら、見逃してやる」
マイダード「……」
闇主「下らなかったら即、殺すけどな」


以前の、内輪での新年会の時とは違う。敵に囲まれたこの状況で、笑いを取るのは相当に難しいことである。
だが、選択の余地などあるはずもなかった。

刺すような視線の中、『まぁるくなって相談、ちょっと待ってね』する三人組。
幼い頃に戻ったようで、少し嬉しかったりもする。

オルグァン「……まるで、千夜一夜物語のような状況になってきたな」
スラヴィ「あぁ、処刑を先延ばしにするために夜な夜な面白い話を聞かせて、王の気を逸らせたってやつ?」
オルグァン「どうする?おれは口下手お前は毒舌、こいつは失言の天才とくれば状況は絶望的だ」
マイダード「お前、人のことをそんな風に思ってたのか……」
スラヴィ「下手なことを口走って、逆に怒らせても困るしね」
マイダード「漫才はおととしやったしな……」
スラヴィ「コントをやろうにも、小道具がないし」
オルグァン「そもそも、この短時間で思いつくネタなんて、たかが知れているし……」

命の危機が迫るほど心が落ち着いていくのは、浮城の人間の性かも知れない。
うーん、と唸って頭を抱える三人組を、遠巻きに冷たく見ている妖貴たち。


無言のまま、大事な仲間の顔をじっと見つめるスラヴィ。マイダードはやや焦って目を逸らしたが、オルグァンは逸らさなかった。
オルグァン「どうした、急におとなしくなって」
スラヴィ「……人は、どんな時に笑うと思う?」
オルグァン「?」
マイダード「滑稽なものを見た時や聞いた時、或いは、自分の欲求が満たされて嬉しい時かな」
スラヴィ「そう。でも、上級魔性が笑うのは?少なくとも、一般的な人間の感覚とはずれてると思うわ」
オルグァン「何が言いたいんだ?」

しゃがんだ姿勢でオルグァンと目を合わせ、指先で床を叩くスラヴィ。
スラヴィ「今、あいつらが望んでいる状況を考えてみて。わたしたちが面白いギャグをやって、素直に笑うと思う?」
オルグァン「意地でも笑わんだろうな」
スラヴィ「それは、そうよ。相手を笑わせる基本は、『相手が喜ぶことをする』ことだもの」
オルグァン「だからその喜ぶことってのが、わからんだろう」
スラヴィ「わたしにはもうわかったわ」
怪訝な顔をしている二人に、スラヴィはにっこり微笑みかける。

オルグァン「なんだって……」
マイダード「どういうことなんだ?」
顔を寄せる二人。
スラヴィ「つまり……」
すっと、右腕を上げる。

スラヴィ「こういうことよ!!」
言うや否や、スラヴィの拳がマイダードの頬に炸裂した。
不意を突かれた彼の体は、吹き飛びこそしなかったが、よろけて尻餅をついた。

マイダード「痛ててて……」
オルグァン「おい、何をする!」

頬を押さえて起き上がるマイダードを、青ざめた顔で助け起こすオルグァン。
驚いたのは妖貴たちも同じだった。唖然として三人組を見ている。
仲間を殴り飛ばしたスラヴィは、顔の半分を手で覆って叫ぶ。

スラヴィ「もう、いや!あんたたちが頼りないせいでこんなことになったのよ!!」
マイダード「………」
オルグァン「お前、そんな言い方は……」

スラヴィはオルグァンに向き直ると、さらにその頬を打った。
スラヴィ「だったら面白いネタくらいすぐ思いつきなさいよ、役立たず!」
オルグァン「なんだと……」
怒りに震えるオルグァンと、開いた口が塞がらないマイダード。

オルグァン「お前な、いくら追い詰められていると言っても、言っていいことと悪いことが」
スラヴィ「今のはいいことでしょ?言われて悔しければ殴り返せば?」
オルグァン「この……」

スラヴィの襟首を掴むオルグァン。その肩をマイダードが掴む。
マイダード「オルグァン、やめろ」
オルグァン「お前が止めるか!!」
マイダード「スラヴィは、最初から真剣だった。ふざけてたおれたちが悪いんだ」
オルグァン「どこまで甘いんだお前は。それだから、こいつがつけあがって……」
構わず拳を振り下ろそうとするオルグァン。

争いを間近で見ようと、妖貴たちが集まってきた。
口元が歪んでいるのは、不愉快なためではない。むしろその逆だった。

須蓮「素敵……」
佳瑠「所詮人間なんて、こんなものよね」


マイダード「やめろって!」
怒鳴って、突き飛ばすマイダード。拳は空振りし、スラヴィの襟首は解放される。
オルグァン「そんなにいい格好がしたいか!」
日頃の冷静さはどこへやら、感情を剥き出しにするオルグァン。
マイダード「落ち着けよ」
スラヴィ「そうよ。こんな時でしか目立てないんだから、必死なんでしょうけど」
オルグァン「聞いたろ、これがこいつの本性だ。どけ!!」
マイダード「死んでもどかない」
スラヴィ「いたっ!」
スラヴィの髪を掴むオルグァン。負けじとスラヴィも引っかく。

スラヴィ「なにするのよ!」
マイダード「この……」
オルグァン「邪魔するならお前も殴る!」
マイダード「いい加減にしろ!今がどんな状況かわかってるのか!」

スラヴィを守りながらオルグァンに蹴りを入れるマイダード。
オルグァン「どけっ!」
マイダード「どくのはそっちだろ!!」


葛衣「ふ、ふふ……」
葛衣が吹き出した。つられて他の妖貴たちも笑う。

桜妃「あーーーーははっはっは!!」

柘榴の妖主がぎょっとした顔をしたが、もう間に合わない。
見れば普段笑わない金の妖主までもが、肩を震わせて笑っている。

繊屍「はは、仲間割れとは醜い……」
紫「人間どもが見苦しくのたうちまわるのは、最高の余興……く、く」

闇主「お前ら、待て!これは……」
柘榴の妖主が鎮めようとするが、誰も聞いていなかった。

白「ほほ、いい見世物じゃのう」
緑「男二人に女が一人で、うまくいくはずがないのですわ」
金「無様な……この程度で魔性を狩ろうとは、片腹痛い」

スラヴィの袖を掴むオルグァン。
オルグァン「元はと言えば、お前が転移に失敗したのが原因だろう!」
スラヴィ「偶然よ。わたしのせいじゃないもの」
オルグァン「どの口がそれを……!」
荒れるオルグァンを必死で宥めながら、マイダードが告げる。
マイダード「だから落ち着け。スラヴィ、お前もいい加減に謝れ。らしくないぞ!」
スラヴィ「あなたにわたしの何がわかるって言うの?他人でしょ」
マイダード「……!!」
言葉に詰まるマイダードに、とどめの一撃が下る。
スラヴィ「迷惑なのよね、一方的に庇われても」


「ぶ」と空気が漏れる唇を、九具楽が押さえた。吹き出すのを懸命に堪えているが、目は弓形に反っている。
美貌と力に溢れる妖貴は、女に不自由したことがない。
女に冷たくされる人間の男は、彼らの目には滑稽にしか映らなかった。

九具楽「あまりしつこいと、嫌われるので、は、ないか……?」
繊屍「九具楽、失礼だよ。そんなに笑うものでは……ブブッ!」

マイダードが固まっているのを見て、女性陣が残酷な声を投げかける。
焔矢「おや、あの坊やは、衝撃で動けないようだよ」
魔月「振られた男ってのもけっこう食指が動くわね」
散佳「私が言うのも何だけど、悪趣味」

マイダード「本気で言ってるのか……」
オルグァン「なんだ、その被害者面は?だからおれは、こんな女はやめろと言ったんだ」
マイダード「こんな女、だって?訂正しろ」
オルグァンに掴みかかるマイダード。

オルグァン「懲りない奴だな……死ななければ、わからんか」
マイダード「やってみろよ!!」



闇主「…………」

爆笑の渦に包まれるホール内で、一人渋面をしている柘榴の妖主。彼だけが、スラヴィの策略に気づいていた。
笑いが収まった頃、彼は「ぱん」と手を打った。

闇主「もういい、やめ」

スラヴィは素早く表情を変えて向き直った。
取っ組み合いをしていた男性二人も、同様に居住まいを正す。
その時になって初めて、自分が笑っていることに気付いた妖貴もいた。

スラヴィ「どう?みんなを『笑わせた』わよ」

告げた瞬間、妖貴たちの顔からさっと笑みが消えた。まさか、と顔を強ばらせてスラヴィたちを見るが、既に遅い。
マイダードたちも、にやにや笑いながら妖貴を見ていた。傷だらけではあったが、誇らしげな顔をしている。

闇主「上級魔性は、他人の不幸や諍いを何より喜ぶ……そこを突いてくるとは、考えたな」

どよめきが広がった。

九具楽「ば、馬鹿な……演技だったというのか!」
闇主「お前もまだまだだな。つーか、ここにいる連中は全員アホだろ?まんまと騙されやがって」
桜妃「そんな……人間なんかに、踊らされるなんて」
決まり悪げにざわつく妖貴たちを尻目に、微笑むスラヴィ。

スラヴィ「わたしたちが喧嘩なんて、するはずないじゃない。こんなに仲良しなのに」
マイダード「本気で痛かったんだが」
オルグァン「悪い、おれは途中まで気づかなかった。最初は本気だった」
スラヴィ「ちょっとちょっと」

笑いあっている三人組を、冷たい声が刺す。

闇主「なかなか、頭の回る女だな。正直侮っていた」
スラヴィ「そりゃあ、紅蓮姫奪還チームのリーダーですもの」
マイダード「それは公式設定なのか?」
スラヴィ「うるさいわね」
オルグァン「さあ、約束だ。おれたちを解放してもらおうか」


闇主「………」

パチンと指を鳴らす柘榴の妖主。
瞬間、紫紺の妖主が放った糸が巻きつき、スラヴィの体は宙吊りにされる。

スラヴィ「どういうこと!?約束が違うじゃない!!」
天井から抗議の言葉を叫ぶスラヴィ。

闇主「人の話は、最後まで聞いてろ。『おれたちを笑わせたら』と言ったろ?おれはまだ笑ってない」
スラヴィ「……!!」
闇主「もちろん、お前は見逃してやるさ。今度はこいつらだけで勝負してもらう」
スラヴィ「そんな、降ろしなさいよ!」
マイダード「スラヴィ、心配するな!(笑)」
オルグァン「後のことはおれたちに任せろ!(笑)」
スラヴィ「だからその(笑)は何なのよ!やっぱり、さっき殴ったこと根に持ってるんでしょう!?」

紫「美しい友情だな」
スラヴィ「……本気で言ってるのあなた……」
自分を拘束した男に向かって、毒づくスラヴィ。

紫「あまり暴れると、下着が見えるぞ。私は構わないが」
スラヴィ「そんなもんはいてないわよ!!」





〜〜〜〜〜不適切な発言がありました。しばらくお待ちください〜〜〜〜〜





闇主「鼻血は止まったか?」
マイダード「ああ」
オルグァン「何とか………」
闇主「では仕切り直しだ。お前たちにも、大善利に参加してもらう」

三人組の乱入によって、大善利は中断されていた。今更それを再開しようと言っている。

九具楽「また、そのようなお戯れを。こんな薄汚い人間を、妖主の方々と同じ舞台に上げろと?」
闇主「文句を言うと、お前もノーパンで天井から吊るすぞ」
九具楽「………」


と言うわけで←場面転換に便利な言葉
黄緑と灰色のおべべを着せられ、翡翠の妖主の隣に座らされる二人。
畳の上に、直に。

オルグァン「座布団は?」
闇主「お前らには十年早い。頑張って一流になれば与えられる」
オルグァン「………」
闇主「映す価値なしと判断されたら、画面から消えるからな」
マイダード(格付けチェックかよ!)
闇主「では、第二問だ」
扇子で机を叩く司会者。

スラヴィ「二人とも頑張ってー!」
マイダード「………」
オルグァン「………」
スラヴィ「ちょっと、なんで無視するの!?」
紫「そっとしておいてやれ。……そうか、冒頭の一節はこの伏線だったわけか」
スラヴィ「柘榴の妖主だって、どう見ても履いてないでしょ」
紫「あれは付いてないだけだ」
スラヴィ「うそ!?」
闇主「殺すぞお前ら」


スラヴィの機転で難を逃れたものの、一難去ってまた一難。
今度は一流芸能人の座をかけて、妖主たちと争うことになってしまったマイダード&オルグァン。
果たして勝負の行方はいかに。





あと、ラスたちの到着が遅いのは、正月で道が渋滞しているからです。

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