鉄仮面事件から1ヶ月後、ダルターラは無事にパリに帰還した。 ダルターラ「スラヴィス、オルグァス、マイダス!ただいま!」 スラヴィス「おかえり。待ってたよ」 オルグァス「よく帰って来たな」 マイダス「……おかえり」 マイスラの間に流れる微妙な空気を察するダルターラ。 ダルターラ「ちょっとマイダス、まだスラヴィスとちゃんと話してないの?」 マイダス「子供が入ってくる領分じゃない」 ダルターラ「私は10代のうちから故郷に婚約者がいたのよ。ある意味二人より進んでたんだから。年子の弟もいるし、男の人の気持ちも少しはわかるつもり」 マイダス「いや、わかってないな」 ダルターラ「せっかくスラヴィスが戻って来たのに、このままじゃスラヴィスがかわいそう!」 マイダス「……」 スラヴィス「その辺にしておいてくれないかい?後はわたしが話すから」 ダルターラを部屋から出し、二人きりになるマイスラ。 スラヴィス「わたしのこと嫌いになったなら、はっきり言いなさい」 マイダス「……そうなれたらいいんだが」 スラヴィス「じゃあ何よ。もしかして、人前でキスしたから怒ってるの?」 マイダス「そうじゃなくて、その前だ」 スラヴィス「?」 マイダス「お前さ、霊体になった後も、ずっと傍でおれたちを見守ってたって言ったよな?」 スラヴィス「ええ」 マイダス「つまり……朝から晩まで……プライベートな時も」 スラヴィス「〜♪」 マイダス「口笛でごまかすなって。なあ、そういうのやめてくれ、本当に。いくら好きな女だからって、許せないってことはあるんだぞ。スラヴィだって、着替えやら入浴やら覗かれたら嫌だろ?」 スラヴィス「マイダスはそんな事しないでしょ」 マイダス「おれならしないってわかった上でかよ」 スラヴィス「悪かったとは思ってる。でも、生き返ることなんて諦めてたし、それならなるべく好きな人の近くにいたかったの」 マイダス「好きな人……」 スラヴィス「ちなみにオルグァスの部屋は覗いてないわ。マイダスだけ」 マイダス「おれだけ?なんだ……おれはてっきり……」 スラヴィス「当たり前じゃない。マイダス以外の男の私生活なんて興味ないもの」 マイダス「そうか……!わかった、もう一度申し込んでいいか?」 スラヴィス「うん!」 ※ 一方、バスティーユ牢獄に収監されたアンシュー夫婦は、処刑の日を間近に控えていた。 コンスラスの実母のチェリンヌはフランス王妃であるが、不倫の噂があり国民からの支持は薄れかけていた。 母の権威に守られていたコンスラスに恨みを抱く銃士隊は、そこをチャンスとばかりに政府とタッグを組んで、反逆罪の名目(実際そうなのだが)で、処刑に踏み切ったのである。 コンスラス「今宵の月も今日限り、か……」 鉄格子の向こうの月を眺めて、意味不明の呟きを漏らすコンスラス。元々生に対する執着が薄いので、娘のイリアさえ無事ならこの世に未練はなかった。 夫も一緒だし……と、傍らでふてくされている、アンシューに視線を戻す。 コンスラス「アンシュー、どうした?今夜は随分大人しいな」 アンシュー「……」 いつもは、夜になると執拗に妻を求めてくるアンシューが、微動だにしない。 処刑を控えているのだから、なおさらこれは異常なことであった。 アンシュー「ふん。芝居はもうおしまいだ」 コンスラス「な……!?」 夫の異変に気付いた時には、遅かった。 彼の懐から放たれた鎖が、牢屋の壁を破壊していた。 コンスラス「お、お前、アンシューではないな?」 男「今頃気づいたのか?あの狡猾な男が、こんな簡単な罠に引っ掛かるはずもなかろうよ」 夫とそっくりの顔をした、しかしどこか卑屈そうな男は、マントを翻して立ち上がった。 男「おれの名はサバック。さっさとここから出るぞ」 ※ ヒナディー「首尾はどうかしら、鉄仮面?」 アンシュー「ああ、順調だ。今頃はおれの影武者が、妻を助け出しアジトに向かっているところだ」 ヒナディー「そう……」 満足そうに微笑む黒幕。全ては彼女の差し金だった。 後は、チェリンヌ王妃の不倫の決定的証拠を、フランス国王と国民の目前に突きつけるだけ。 アンシュー「おれは、楽しければなんでもいい。あなたの仰せのままにいたしますよ」 ヒナディー「ふふ。でも、いいの?王妃はあなたの奥さんの母親……あなたにとっては、義母にあたる存在でしょうに」 アンシュー「ラスは、未だ親離れできてない子供なんだ。あいつの心が完全におれに向くためには、両親の存在なんて邪魔なんだよ」 ヒナディー「まあ、正直な方。そうね……フランスを手中に収めるためには、子供という名の国民には泣いてもらわなければ……」 ※ 三銃士と鉄仮面が、再び対決の時を迎える。 ダルターラの婚約者&弟の安否は? 国王臣下でありながらヒナディーのスパイである青年ヨージュは、無事チェリンヌ王妃を寝取れるのか? マイダスとスラヴィスの結婚は? ヨーヨーには一体何の意味があったのか! 『三銃士2』、近日未公開。 永遠にご期待下さい!! 戻る [*前] | [次#] ページ: TOPへ |