受験って大変ですね(黄黒♀)

高三設定


あんな思いはもう勘弁だ、二度としたくない。
だから、考えのズレが生じないようにどんなに忙しくても話をする時間はしっかりとってきた。
その甲斐あって姿を消されることもなく、志望校を教えてもらうこともできた。
(志望校が女子大でなくて本当に良かった。)
これで大学は同じところへ行けると喜んでいたのに、まさかこんなことになるとは。
このままだと同じ大学に行けなくなってしまう。

「で、なんで私のとこに来るんですか。私に言われても君の頭の出来は私にはどうにもできませんよ。」
「黒子っちヒドイ!同じとこ行けないかもしれないのに!ちょっとくらい残念そうにしてほしいっス!」
「私は黄瀬くんと同じ大学に行きたくて志望校を決めたわけではないです。やりたいことをするために行くんです。」
「そうっスけど…」
「だいたいこの時期の模試の判定がEってナメてるんですか。こんなの志望校変更レベルですよ。」
「おっしゃる通りで…」
「そもそもなんでまともに勉強してないんですか。君はそんなに自分の頭に自信があったんですか?」
「AO入試があると思ってて…」
「なんで志望校の入試要項や偏差値を調べてないんですか。それでも受験生ですか。」
「返す言葉もございません…」
「いっそ一芸入試があるとこにしたらどうですか。モデルなんですからそれだけでいいんじゃないですか。」
「それは嫌っス!」
「じゃあ今から予備校なり家庭教師なりで死に物狂いで勉強してください。次の模試までは会いませんから、そこでB判定とれなければ志望校変更してください。」
「そんなっ…!」
「異論は認めません。それでは。」

呆れられたかもしれない。
見捨てられないだけマシだけどかなりへこむ。
次の模試が終わるまでは会えないのも辛い。
でも、万が一模試結果が悪いのに黒子の言葉を無視して志望校変更しなかったら、二度と会ってもらえない可能性が高い。
それを回避するためにも勉強をしなければ。

―――

「お前の演技には感心させられるのだよ。」
「唐突になんですか、緑間くん。」
黄瀬に次の模試まで会わない宣言をしてから数日、図書館で勉強していた黒子の元へ緑間がきた。
緑間とは学部は違うものの、志望校が同じだったため情報交換をしていた。
「黄瀬に宣戦布告をされたのだよ。
俺だけお前と同じ大学には行かせないと。」
「そうですか。やる気が出たようで良かったです。」
「いくら合格させるためとはいえ、次の模試でB判定でなければ志望校変更とは厳しいのだよ。」
「A判定でないだけ難易度は低いですよ。」
「A判定などそれこそ本当に志望校変更になるのだよ。」
緑間は黄瀬と同じ大学に行くのを黒子が楽しみにしていることに気づいていた。
黒子と緑間は早い段階で志望校を決定しており、互いの志望校が同じと知ってからよく会っていた。
その時に『黄瀬くんも志望校が同じらしいんです。』と至極嬉しそうに言うのを見たからだ。
あんなに嬉しそうにしていたのに、黄瀬にはそれを悟らせずにいるのだから黒子のポーカーフェースには恐れ入る。
「それで?まさかB判定でなければ本当に志望校変更させるのか?」
「当たり前です。やりたい事があるなら仮に落ちても他で合格するより悔いは残らないでしょうし、合格した場合も講義についていく気持ちがあります。でも黄瀬くんの動機は私と同じ大学に行くというだけです。それなら同じ学部のあるランクを下げた大学に変えるべきです。」
淡々と話す黒子からは残念がる様子は皆無だが、心中はおそらく違うだろう。
黄瀬が次の模試で無事にB判定を取ることを願っているはずだ。
それでも、なんでもない振りをしているのは黄瀬にやる気を出させる為か。
「他を受けるくらいなら大学には行かないと言いだしそうだがな。」
「それならそれで構いません。」
「お前はそれでいいのか?」
「良いも悪いも強制するものではありませんから。ただ、学力が足りていないのに無理してまで入ることは許しません。黄瀬くんのためになりませんし、他の志願者に失礼です。」
「黄瀬が不憫でならないのだよ。」
「自業自得です。」
緑間は黄瀬に同情し、黒子に条件を軽くするよう促すつもりであったが、無駄だったようだ。
ここまで厳しくするのは何か考えることがあるのかと思ってしまうほどに。
これはもう下手なフォローなどしないほうが良さそうだと、緑間はこの件に口出しするのをやめた。
そもそも黄瀬がちゃんと勉強しておけばよかっただけなのだ。
心の中で黄瀬へ励ましの言葉をかけ、緑間は黒子に別れを告げ図書館を出た。
そんな緑間を見送った黒子の表情を誰も見ていなかったのは、果たして良かったのか悪かったのか。

―――

「黒子っちー!B!B判定取れたっス!」
「当たり前です。これでやっと受験生の大変さを自覚したようでなによりです。」
「志望校変更しなくていいんスよね?ねっ?」
「はい。」
「よっしゃ!これで黒子っちと同じ大学に行けるっス!」
「志望校変更しないだけで受かるかどうかは別ですけどね。」
「そんな不吉なこと言わないでほしいっス!」
「でもまぁ、頑張りましたね。」
「黒子っちっ…!」
「次はA判定取ってくださいね。」
「えっ…?」
「一緒の大学行けるように頑張ってくださいね。」
「…っ!頑張るっス!」

黄瀬が無事に黒子と同じ大学に受かるかどうかは頑張り次第。


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