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やな様へ 一万打記念リク




放課後の校舎。
昼間より静かなその空間は、部活がテスト前休みに入ったことで更に静けさを増していた。

トランペットを片手に階段を上がり屋上に繋がる扉を開けると、ぶわりと吹き込む風が前髪を揺らす。
少しひんやりとした校舎とは正反対の暑い屋上に足を踏み入れた。

部活はテスト前でお休みなんだけど。
へたくそな私はこんな時だからこそ練習しなくちゃいけないんだ。
だって、もうすぐ野球応援があるから。


上手に吹きたいよ。

彼に届くように。


大きく息を吸い込んでトランペットに吹き込む。
なんでかな。
一人のときはそこそこに吹けるのに。
いざとなると上手に吹くことが出来ない。



「ふぅ・・・」
「苗字」


さなだくん・・!?

溜め息と同時に名前を呼ばれびくりとして振り返ると、そこには真田くんの姿があった。
トレーニングウェアを着ているところを見ると、彼も自主トレ中なんだろう。


てゆうか・・いま真田くん、苗字って呼んでくれたよね・・・?
名前、覚えててくれたんだ・・・
同じクラスじゃないし、話したことだって数える程しかない。
去年の体育祭の係員の会議で少し会話しただけだよ。
絶対に覚えてないだろうと思っていたからすごく嬉しい。



「いつもここで練習してるよな」
「え・・・」
「グラウンドまで聞こえるから」
「ぁ、う、うるさいよね」
「うるさくなんかねぇよ。俺好きだよ。苗字の音」


好き・・・
音のことだと分かっていても真田くんの口から出たその二文字に顔が熱くなる。


「なんでそんなに頑張ってんの?」
「私へたくそだし・・でも野球部のみんなにちゃんと応援が届くように・・・」


うそ。
真田くんにだけ届けばいいの。
野球部を応援するブラスバンド失格だって分かってる。
だけど私の目にはいつだって真田くんしか映っていない。


「みんな・・か」
「う、うん」
「でも・・・さっきから俺の応援曲ばっかり吹いてるよな」



ば、ばれてた・・・?
心臓がぎくりと音を立てた気がする。
真田くんの言う通り、気がつけばついつい真田くんの曲ばっかり吹いていた。


どうしよう・・どうしよう。
恥ずかしすぎる・・・




「俺の為に練習してた、て言ってよ」
「え・・・・?」


ゆっくりと伸ばされた真田くんの大きな手は、トランペットを握る私の手に重なる。


「まだフルイニング投げられねぇけど・・・苗字が俺だけを応援してくれたら頑張れる」
「私の応援なんかで力になれる・・・?」






「好きな子に応援されて頑張れない奴なんていねぇよ」


きらきらとした笑顔でそんな事を言うもんだから、私の心臓は破裂寸前で。
うっかり落としそうになったトランペットを真田くんが支えてくれた。


「私へたくそだよ?」
「じゃあ・・・」


ふ、と影の無いはずの屋上に影が落ちて、目の前が少し暗くなる。


ふわりと近付いた真田くんの顔が離れると影は無くなり、また日差しが私たちを照り付ける。
そっと真田くんが人差し指でなぞるのは、たった今真田くんの唇が触れた私の唇。


「上手くなれるおまじない、な」


そう言った真田くんはやっぱりすごくかっこよくて。
もう、今すぐにでも死んでしまってもいいかも、なんて思った。


「俊平、て呼んで」
「しゅ、しゅんぺー・・」
「球場でも俺に聞こえるくらいに大声で呼んで」


やっぱり、死んでもいいなんてうそ。
真田くんの応援をするんだもん。



だって、きっと、なんだかすごく上手に吹けるような気がするの。




全力投球
(たった少しでもいい。きみの力になりたい)


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やな様リクの真田夢でした。
いかがでしたでしょうか。。
小鳥遊初のサナーダ夢でした。

ヒロインをトランペッター設定にしてみました。
これはほんとに真田なのか怪しいところですが・・・受けとっていただければ幸いです。
よろしければやな様限定でお持ち帰りくださいませ☆
この度は企画へご参加いただき誠にありがとうございました。
今後もTRAIN-TRAIN!!をよろしくお願いいたします♪

2010/10/17




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