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綾人様へ 一万打記念リク




「元気か?」
『洋ちゃんこそ。久しぶりだね』


名前の声を聞いたのはどれくらい振りだろうか。
・・・とは言ってもそれは電話での話であって。
電話越しに聞いた名前の声は少しだけ鼻声だった。


「風邪・・・?」
『ん、昨日からちょっと・・・』


最近寒いからね、と笑った名前はこほこほと咳込んだ。


『前はさ、私が風邪ひくと、洋ちゃんがいつもお見舞いに来てくれたよね』
「あぁ」
『学校さぼって一緒に居てくれた時もあったよね』
「そうだな・・・」







『やっぱり会えないのはさみしいね・・・』


ぽつりと吐き出されたその言葉に、胸がちりちりと痛んだ。
名前が風邪で寝込んでいるというのに、そんな時に俺は駆け付けてやれない。
名前が辛いとき、俺は名前の近くに居てやることが出来ないんだ。

東京で野球をやりたいと名前に伝えたあの日、名前は迷うことなく俺の背中を押してくれた。
あれから一年半、初めて名前の口から漏れた弱音。


周りのしん、とした空気のせいなのか妙な焦燥感に駆られる。
名前の息遣いがいつもよりよく聞こえて、名前が次に漏らす言葉が怖い。



『野球と私どっちが大事なの?』






『なぁんて言わないよ』


名前の言葉に止まりかけた心臓は何とか命拾いをした。
いつか同じように彼女を地元に残してきた先輩に言われたことがある。

野球と私とどっちが大事かと言われたら、もうそれは終わりが近いと。


『だって、私、甲子園行きたいもん』
「昔から俺以上に行きたがってるもんな。・・心配すんな。絶対、連れてってやるから」
『うん!』


そう言った名前の笑顔はすぐに思い浮かべることが出来て。
思い浮かべてみたら無性に名前を抱きしめたくなった。



「やっぱり・・会いてぇ・・・」
「・・・・・・」


言ってからはっとした。
俺は名前を置いてきた側なのに、会いたいなんてなんとも身勝手な発言だ。
ましてや練習の休みも無く、会いに行く目処などまるで立たないくせに。


「わり・・」
『行く!!行くよ!』
「え・・・?」
『洋ちゃんが望むならいつだって会いに行く。千葉から東京なんて、あっという間なんだから!』


大声を出すもんだから、またごほごほとむせた名前を取り合えず落ち着かせた。


『私ね、バイト始めたの』
「バイト?」
『うん。洋ちゃんが私に会いたいって言ってくれたらすぐに会いに行けるようにお金貯めてたんだ』


・・・名前がそんな事をしていたなんて、全く気がつかなかった。
よくよく考えればメールの返事が前より少し遅い時間になっていたじゃないか。
そんな事にも気付けないなんて。



だけど名前が俺の為にバイトを始めていたとか、離れていても名前の生活に俺が係われていたことが嬉しかった。


「バイト、何してんだ?」
『ケーキ屋さん!可愛い制服なんだよ』


可愛い制服・・・
それは想像しただけでやばい。
なんかすげぇ心配になってきた。


「変な奴とか来ねぇ?」
『大丈夫だよ。友達と一緒にやってるの』
「そっか・・・なんか、名前に頼ってばっかだな。でも・・早く会いてぇ」
『洋ちゃんがそう思ってくれるだけでも、私はすごく幸せ』


きっと会いたいと言えば俺を困らせると思っていたんだろう。
名前はいつだってそうやって俺の事を考えてくれる。
それに比べて俺は、高校三年間で一体名前にいくつの事をしてやれるだろう。

今はしてもらうばっかりで、名前の近くにも居てやれない駄目な恋人だけど
来年の夏こそは必ずあの場所に連れて行ってやるから。


だからその時は



最高の恋人だと言って笑ってくれよ。




進め、進め
(ぼくがきみに見せてあげる)


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綾人様リク倉持夢でした。

切甘とのリクをいただいておりましたが、
いかがでしたでしょうか…?
切甘になっておりましたでしょうか……?

電話での会話のみで絡みが無く、
申し訳ありません(^^;)
お気に召していただければ幸いです。

リクをしてくださった綾人様のみ、
よろしければお持ち帰りください。

綾人様、この度は一万打企画にご参加
いただき誠にありがとうございました!!
今後ともTRAIN-TRAIN!!と小鳥遊を
よろしくお願いいたします☆

2010/10/13 小鳥遊 隼斗




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