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優様へ 一万打記念リク




よくマンガであるような、ボールが飛んできてそれがあたしに当たって、大好きな人が心配してくれて・・・

なんてそんなあまぁい奇跡が起こるのかと思っていたのに。



「っーー・・・!」


ボールが当たった時のリアクションは、痛いなんてもんじゃなくて。
リアルはもっと悲惨だ。
声も出ない。
私はただ、太田先生に用事があったからグラウンドの横を通っただけだったのに。
まぁ、あいつを近くで見れるかも、なんて下心が無かったのかと言われれば否定はできないけど。
だからってこんな仕打ちひどいじゃないか。

今しがた真横から飛んできてあたしの腕に命中した野球ボールは、知らん顔であたしの足元に転がっている。
てゆうか誰・・・こんなとこに飛ばしたやつ・・

まだ当たって間もないのに長袖シャツの下にある腕はずきずきと痛んで、持ち上げることも出来ない。
痛みに堪えられそうもないから、一先ずその場にしゃがみ込んでシャツの胸ポケットから携帯電話を取り出す。

誰かに助けを呼ぼう。
きっとまだ学校内にいるはず・・・



「苗字!大丈夫か!?」
「へ・・・」


通話ボタンを押そうとしたそのとき。
背後から大きな声がして、振り向くとそこには練習着に身を包んだ見慣れた野球部員がいた。


あぁ、なんてこと。
大丈夫じゃないし腕の痛みは尋常じゃないけれど、彼が駆け付けてくれるなんて。
やっぱりマンガのような出来事だと思っていいでしょうか。


「どこに当たった!?」
「ぅ、うで・・」


彼・・野球部のレギュラー・・・あたしの親友であり大好きな人・・・・倉持は隣にしゃがみ込むとあたしのシャツの袖を少し乱暴に素早く捲り上げた。


「ぎゃ・・・!」


思わず女の子らしくない声を出してしまい慌てて口を押さえる。

だって!
だって!!
あたしの腕が濃い赤紫色をしてて、すごい腫れてたんだもん!!!


「やべぇな・・保健室連れてく。立てるか?」
「うん、は、早くは歩けないかも・・・」
「歩くのしんどかったら担いでく」
「ややゃ!恥ずかしいからいいって!!歩けるから大丈夫!」


じゃあせめて肩を貸すから、といつに無く優しい倉持に付き添われ、保健室へと歩き出す。
多分、これ以上近付いたら死んでしまいそうです。
倉持は私がそんなこと思ってるなんてぜーんぜん気付いてないんだろね。
人の事よく見ているようで意外と鈍感ですよね、あなた。




「失礼しまーす」
「どうしたの?」


がらりとドアを開けると保健医の先生が椅子から立ち上がり、私たちの方へと歩み寄ってきた。


「打球が苗字の腕に当たっちまって・・・」
「ちょっと見せて」


先生はそっとシャツの袖を捲り上げた。
さっきの倉持の何倍も優しく。
先生が診てくれてる間、倉持は私の隣でずっと心配そうな顔をしている。
駆け付けてきてくれた時から思っていたけど、いつも男子同然に扱われているだけに、なんだか慣れない女の子扱いにどきどきしてしまう。




「ありがとうございましたー」
「お大事にね」


保健室のドアを開けた倉持に続いて廊下に出る。
先生に診てもらった結果、腕は打撲だろうと診断された。
腕には包帯が巻かれ、明日念のため病院に行くようにと言われた。

急いで近くの入口から校舎内に入ったもんだから、二人して靴下のままぺたぺた廊下を歩いていると、遠くで野球部の練習する音が聞こえる。
静かな廊下を並んで歩きながら、そっと横目で倉持を盗み見してみたり。
やっぱりユニフォーム姿、似合うな。
なんて思っていたらふいに倉持がこっちを向いた。


「・・・苗字、ほんとわりぃ」
「いいってー、わざとじゃないんだし。ぇ、わざとじゃないよね?」
「ヒャハ!んなわけねぇだろ。・・・でも痛ぇよな・・ごめん」
「あたしと倉持の仲じゃん!気にしないでってば」


そう言えば倉持は少し笑って、おう、と答えた。


「苗字ってチャリ通だったよな?」
「うん」
「あと少しで練習終わるから教室で待ってろ。送ってく」
「えっ、いいよいいよ!倉持寮じゃん」
「でもその腕じゃチャリ乗れないだろ」
「あ・・・」


そうか。
確かに。
乗ることも出来なきゃ押して歩く事もできなそうだ。



「それに・・・」


倉持の手が包帯が巻かれた腕の方の指先にそっと触れた。




「好きなやつににこんな怪我させといてほっとけるわけねぇだろ・・・」




は・・・・
ぇ・・・・・・!??


目の前には普段教室では見たことの無いくらい真剣な顔した倉持がいて、あたしの心臓は止まっちゃうんじゃないかってくらいどきどき・・いや、ばくばくしている。


「そ、それって・・す、す好きって親友だから・・・?」
「・・・ちげぇよ」
「じゃあ、けっ怪我が治っても私の側に居てくれる・・・?」


そう言ってみたら倉持は驚いたような顔をしたから、調子に乗ってしまったことをすごく後悔した。
だけど、



「ヒャハっ!苗字が嫌がったって側にいてやる!」


そう言って笑った倉持はさっきよりしっかり、あたしの手を握ってくれたの。
腕はやっぱりずきずきと痛いけど、包帯をぐるぐる巻かれたこの腕は私と倉持をくっつけてくれた。


倉持を待つ教室で、一人にやにやしながらその痛々しい腕を携帯のカメラに収めてみた。




包帯まじっく
(あたしの大事なたからもの)


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一万打企画リクその@
優様リクの倉持夢です。
倉持で甘甘とのことでしたがいかがでしたでしょうか…
お気に召していただけると嬉しいです。

硬球、当たると痛いですよねぇ…
洋一くんは名前さまに当ててしまって慌ててダッシュで駆け付けてくれました、的な(^^;ゞ

優様のみ、お持ち帰り自由とさせていただきます♪
一万打企画にご参加いただき誠にありがとうございました!
今後ともTRAIN-TRAIN!!をよろしくお願いいたします!

小鳥遊 隼斗




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