企画・記念 | ナノ

フミさん好き様へ 二十万打リク



いつからだろう。

練習でも、試合でも。
名前が足を運んでくれるだけで嬉しかった。

嬉しさの中に申し訳なさや不甲斐なさ、焦りが混じり始めたのはいつからだったか。


2年生の秋頃から試合でランナーコーチを務めることが多くなっていた。
それが次第に定着して行き、最近では専らサードコーチャーだ。
試合に勝っても負けても、レギュラー陣とはどこか一線を引いてしまい、輪の中にいるのにどこかで馴染めていない気がしていた。

今の自分の役割が嫌なわけじゃない。
重要な役割を担っていることだって重々承知している。
ただ、やっぱり試合に出たい。
打席に立ちたい、守備につきたい。
それは野球部員だったら誰もが持っている望みだ。
それが叶わない現実に失望しかけていた。



休日に練習試合があった週明け。
昼休みに学食で昼食を摂り、教室へと戻る途中で名前を見つけた。
廊下の端で嬉しそうに何かを話す名前の向かい側には哲がいる。

ただ同級生と話しているだけだろう。
そう言い聞かせようとしても胸の奥が騒つく。


「ふみや!」


思わず立ち止まり二人の姿を見ていた俺に気が付き、名前はパタパタとこちらへ駆けてくる。
ただそれだけでこれ程までにほっとするなんて、どうかしてる。
少し向こうで挨拶代わりに軽く片手をあげた哲に同じように手をあげて返すと、哲はそのまま去っていった。


「哲と…何はなしてたの?」
「ふみやの話!」
「え、おれ…?」


予想外の言葉に思わず面食らった。
何度か瞬きをする間も目の前の名前は何だか嬉しそうに頬を緩ませている。


「ふみやはいつでもかっこよくて優しいって結城くんに自慢しちゃった」
「いや、褒めすぎだよ」


なんでそんな話になったのか少しばかり天然な彼女と、ど天然の哲とのやり取りには皆目見当がつかないが、なんだ、そっか。
心底安心している自分に笑いが込み上げた。


「それに昨日の試合を見てて思ったんだぁ。ふみやってみんなにすごく信頼されてるんだなーって」
「どうして?」
「だって、みんなふみやの判断を信じてホームに突っ込むんだよ」


両腕を前に伸ばしてるその仕草はヘッドスライディングを現しているのだろうか。
その可愛らしい姿に声を出して笑ってしまった。


「結城くんが、ふみやの好判断が試合を決めたことだって何度もあるって。
私だったら慌てて絶対に冷静な判断なんてできないよきっと」
「はは、なんかその姿すごい想像できた」
「でしょ?」
「うん」


俺につられてふわりと笑った名前を堪らずそっと抱き寄せる。
だって、ずっと胸の奥底にあった支えが今、すっと無くなったのが分かったんだ。
信じられない程にそれは、瞬間的に溶けて消えていった。


「俺さ、がんばるよ」
「うん」
「諦めてないよ」
「うん」


大人しく体を預ける名前を抱く腕に少しだけ力をこめて柔らかな髪に頬を寄せる。
ふわりと彼女の香りを感じると、それがまた俺を安心させてくれた。


諦めないよ。
でもまた迷ったときには、こうして俺のことを導いてくれないかな。



みちしるべ
(きらきら、照らす)



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二十万打記念、フミさん好き様リクの楠木夢でした。
お待たせいたしました。

フミさんの苦悩を受け止めるヒロイン…がテーマでしたが、いかがでしたでしょうか…
受け止められていたでしょうか…
なかなか登場しないフミさんですが、彼が放つさわやか&優しさのオーラは只者ではないですよね
わたしも大好きです〜
フミさんはきっと彼女にもとっても優しい口調で話すに違いない!と言葉づかいにも気をつけてみました。

このような代物で大変恐縮ですが、フミさん好き様限定でお持ち帰り可とさせていただいておりますのでよろしければお持ち帰りくださいませ(^O^)

この度は二十万打企画にご参加いただき、ありがとうございました!
また、いつもTRAIN-TRAIN!!にお越し下さり本当にありがとうございます!
温かいお言葉をいただき、とても励みになります。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします(^^)

2015/2/14 小鳥遊 はやと




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