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Valentine 2012



「純気持ちわるーい」
「突然なんだコラ」


教室に戻ってくるなり、机に頬杖をついてこっちを見上げる名前がそう言った。


「チョコ貰ったんだ?」
「ん?」
「それ!いま呼び出されてたじゃん」


名前が指さすのは俺の右手に提げられた小さな紙袋。
たった今二年の見知らぬ女子に手渡されたものだった。


「本命っぽかったよねー、にやにやしちゃってさー」
「にやにやなんかしてねぇよ!」
「してるね!してるよね、亮介」


名前の隣にいた亮介は話を振られるとちらりと俺を見てからうんうん、と頷いた。


「そうだね、してるしてる」
「亮介てめっ」
「ほらね!」
「でも…男だったら誰だって嬉しいんじゃない?本命チョコ貰ったら」


好きなやつから貰えるのが一番嬉しいけど、少なくとも悪い気はしないよな。
亮介の意見に納得していると、名前がじろりとこっちを睨んだ。


「だって私があげたときより嬉しそうな顔してるんだよ?それが腹立つ!」


待て待て。
今の言い方はおかしいだろ。
確かに朝一で名前からチョコを貰った。
だけどそれは亮介と同時に貰ったもので、完全なる義理チョコだ。
分かってはいたけど、好きなやつから貰う明らかな義理チョコはやっぱり切ない。


「お前がくれたのは義理チョコじゃねぇか!」


半ばやけになってそう言った後に名前の顔を見てぎょっとした。
だって目の前の名前はじわりと瞳に涙を浮かべて、口をへの字に結んでいるじゃないか。
名前は素早く俺の机の横に置かれたバッグの上に置いてあった袋を掴む。
それは朝、名前が俺に渡したチョコだ。


「本命だばかーっ!」


掴んだそれを思いきり俺に投げ付けて、そのまま教室を出ていってしまった。


「え…ほ、本命…?」


呆気に取られ、名前の言葉と涙で混乱する頭の中をどうにか整理しようとしていると、隣から亮介の堪えるような笑い声が聞こえた。


「名前が純に渡したチョコ、みんなのより見た目が豪華だって気が付かなかった?」


言われてみて亮介が貰ったものと見比べると、確かに俺が貰ったもののほうが豪華だ。
くそ、名前からのチョコを義理だと決めつけていた俺はそんなこと全く気が付かなかった。
つうか分かりにくいんだよ、あのばか。


「とりあえず追いかければ?」


言われなくてもそうするっつの。
名前から貰ったチョコを掴んで教室を飛び出した。
文句言って、それから謝って、それから…

すげぇ嬉しいって伝えて、抱き締めてやる。




プラリネにこめた愛




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