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One week diary



右手には鉛筆、机の上には開かれたスケッチブック。
風景画を描きたいという理由を付けて手に入れた美術室の窓際の席。
だけど鉛筆を持つ手は一向に進まず、風景画が完成する気配は微塵も感じられない。
だって美術の授業が始まってから視線はずっと、窓から見える笑顔に釘付けだった。

水曜日の3限目は美術の授業。
校舎三階の美術室からは体育グラウンドがよく見える。
外では文哉先輩のクラスが体育の授業でサッカーをしている。
この時間割を知った時はどれだけ喜んだことか。
一年の時はあんまり時間割に恵まれていなかったから、二年になってからの時間割はそれはもう神憑ってるとしか思えなかった。


「あれ、苗字全然進んでねーじゃん」
「え?わ、倉持くん!」


眩しすぎる笑顔で楽しそうにボールを蹴っている文哉先輩を眺めていたら、横を通り掛かった倉持くんが私のスケッチブックを覗き込んだ。
突然声を掛けられたことにも驚いたけど、文哉先輩を見てたのがバレたかもしれないと、慌てて視線を倉持くんへ動かした。


「フミさんばっか見てると終わんねーぞ」


こっそりと言われたその言葉に目を見開いて倉持君を見上げると、彼はにっと笑った。


「ヒャハ、誰にも言わねぇから安心しろ!」
「う、ありがとう・・・」


うわぁ、恥ずかしい・・・
完全にバレてたじゃん。
倉持くんが良い人でよかった。

程々にな、て笑いながら自分の席に戻った倉持くんに頷きながらも、懲りずにまた窓の外の笑顔に魅入ってしまう。

だって、一瞬たりとも見逃したくない。

結局風景画は終わらなくて課題として持ち帰ることになった。
そんな私を見た倉持くんには、ばかだろって笑われちゃったけど。




窓から眺める水曜日




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