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ちょす様へ 五万打記念リク



12月も目前に迫った頃。
休み時間に声を掛けてきたクラスメイトの女子の話に倉持と二人して適当な相槌を打っていた。
机の上に置かれたA4紙に、赤や緑に黄色といったクリスマスカラーのペンででかでかと書かれていたのは『12/24 パーティー参加者!』の文字。


「二人も来るよね?」
「「は?」」



目の前のクラスメイトの話によれば今年のクリスマスは24日にA組とB組合同のクリスマスパーティーを開催することになったらしく、クラスの全員に出欠を取って回っているんだと言う。
野球部にとってはクリスマスだろうが何だろうがそんなことは関係ない訳で、俺も倉持も少しばかり冷めた目でその紙を見ていた。
世間はクリスマスだと浮かれるのかもしれないけど、俺たちにはいつもと変わらない練習が待っている。
参加なんて出来る訳がなかった。

何気なく机の上の紙をぴらりと指で摘み、目の高さまで持ってくる。
現段階での参加者の名前が書いてあるらしい。
ふーん、けっこう集まるんだな。
ざっと20人強。
上から順に眺めていると、その中に名前の名前を見つけた。
名前も参加するのか。
まぁ・・・クラスの行事なんだから別に当たり前なんだけど。


「これ何でA組も一緒なんだ?」
「あー・・・」


倉持のその素朴な疑問に、クラスメイトは曖昧な反応を見せる。
確かにそうだ。
うちのクラスだけなら分かるけど何でA組まで一緒なんだろうか。
そんなに仲良かったか?
それにこいつのこの反応、何か裏があるに違いない。


「ヒャハ、ぜってー何かあんだろ?」
「たまたまA組とB組にフリーが多かったからっていうのもあるんだけど・・・」
「けど?」


倉持が急かすと、ちらちらと周りを確認するようにしてから小声で言った。


「A組の男子で名前と近付きたいって奴がいるみたいなんだよね」
「まじで?」
「ましまじ。名前狙いでこのパーティー企画したらしいし」
「それ・・・名前は知ってんの?」
「まさか!一部の人しか知らないよ」
「ふーん・・・」
「まぁ、二人も来れそうだったら言ってよ」
「おう」


クラスメイトが俺たちの前から退くと、その先に名前の姿が見えた。
何も知らない名前は友達と話しながら笑顔を浮かべている。
あの笑顔を狙う奴が俺以外にもいるってことか。

くそ、今までクリスマスに練習があることをここまで憎いと思ったことがあっただろうか。
下心見え見えのパーティーに名前が参加するなんて。
心配で練習どころじゃねぇ。



「やばくね?」
「なにが?」
「先越されるかもな、他の男に」
「はっはっは、・・・まさか」
「ヒャハ!顔が焦ってんぞ」


顔に出したくもなる。
だって俺は名前の彼氏でもなければ、名前を狙う他の男となんら変わらないポジションにいるんだから。
その男より少し有利と言えるのは、名前と同じグラスだということぐらいだろう。

もし、そのパーティーがきっかけで名前がその男と付き合うことになったら?



「無理、耐えらんねぇ」

考えただけで気分が沈む。

溜め息を吐きながら、購買で調達した昼飯の入ったビニール袋をぶらぶらさせて、昼休みの廊下を歩く。
ふと前を向くと同じくビニール袋を片手に提げた小さな背中を見つけた。
それがすぐに名前だと気付いた途端、名前に追い付こうと自然と速足になった自分に可笑しさが込み上げた。
何だこれ、必死すぎだろ俺。
名前のことになるとらしくない、と前に倉持に言われた意味が漸く分かった気がする。


「名前!」
「あ、御幸」


振り向いた名前が俺の顔を見てぱっと笑顔を向けてくれる。


「なに買ったの?」
「ベーグルとヨーグルト!」


そう言ってビニール袋を片手に上げて笑う名前は相変わらず小食だ。
隣に並んで歩くと、俺の肩の辺りにある名前の瞳がちらりとこちらを見上げた。
視線を合わせてみればそれは逸らされてしまったけど、その少し照れたような横顔につい期待したくなってしまう。



「御幸、パーティーの話聞いた?」
「あぁ、練習あるから野球部は参加出来ないけど」
「そっかぁ・・・・そうだよね」


ぽつりと言ったその声と少し伏せられたその瞳にどきりと胸が鳴る。

このまま何もせずに他の男に持っていかれるくらいなら例え無謀だったとしても勝負に出てみようか。
名前の横顔をもう一度盗み見てから、少しの期待に溺れてみようと思った。


「名前は参加するんだろ?」
「うん・・・みんなも行くみたいだから」
「じゃあさ・・・・・俺が行かないでって言ったらどうする?」
「え!?」


思いっきり驚いた顔でこっちを向いたから、瞬間的に失敗したな、と感じた。
勝負に出るなんて言った癖に格好悪く慌てて言い訳なんかしてみる。


「うそ、冗談。引くよな、そんなおと」
「・・かない」
「え?」
「行かないよ」


じっとこっちを見てもう一度そう言った名前の顔はみるみるうちに真っ赤に染まり、それはこちらにまで伝染してしまいそうな位だった。



「じゃあ・・・24日の夜、俺のために空けておいてって言ったら?」
「全然空けておくっ」
「練習終わったら名前に会いに行くから」
「いいの・・・?」
「やっぱクリスマスは好きな子と会いてぇじゃん」


真っ赤な頬で嬉しそうにはにかむ名前の、セーターの袖から出る小さな手を繋ぐ。
このままA組の前を通ってやろうか、なんて企んでいることは名前には秘密にしておこう。

とりあえず教室に戻ったら参加者リストから名前の名前を消さなくちゃ。




メリーメリー
(たのしみでしかたないよ。まだ少しさきのはなしなのにね)


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五万打記念、ちょす様リクの御幸夢でした。

いかがだったでしょうか(^^)
クリスマス前に好きなこを取られそうになって焦る御幸。
今年のクリスマスは休日だ!と浮かれてこのネタを書き始めたのですが、高校生って休日もなにも冬休みじゃん、てことに気付きました(^^;
冬休みという存在からかれこれ数年遠退いているため、すっかり忘れていました。
きっと御幸は練習が終わったら寮のチャリをこぎまくって彼女に会いに行くのでしょう(^^)

このような代物で大変恐縮ですが、お気に召していただければ何よりです。
ちょす様限定でお持ち帰り可とさせていただいておりますのでよろしければお持ち帰りくださいませ(^O^)

この度は五万打企画にご参加いただき、ありがとうございました!
また、日頃よりTRAIN-TRAIN!!にお越しいただき本当にありがとうございます!
今後ともTRAIN-TRAIN!!と小鳥遊をよろしくお願いいたします!


2011/11/24 小鳥遊 隼斗




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