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かすが様へ 五万打記念リク




夏のあの日、私はただただ真田の背中を見ていることしか出来なかった。
あの時の真田は笑顔さえ浮かべていたけど、きっと悔しくない筈がない。
球場の外で見つけたその背中に、私は何も言うことが出来なかった。

だって私は所詮部外者で、真田にとってクラスで仲が良い女子の内の一人というだけ。
野球のことだって詳しくはない。
そんな私が何と声を掛けられよう。


お疲れさま。
真田はがんばったよ。
また来年がんばろう。

どれにせよ安っぽい言葉だと思った。
真田を好きだと思いながらも自分の無知に、無力さにがっかりした。


それから夏休みという長い時間も手伝って、真田と私との間には微妙な距離が出来ていた。
今まで通り教室にいれば皆と話す輪の中に一緒にいるけれど、私は真田と目を合わすことが出来ないでいる。


なのにこんなものを読んでるなんてほんと馬鹿みたい。


ブックカバーを掛けた本をぱたりと机に置いた。
誰もいなくなった放課後の教室は怖いくらい静かだ。
深い溜め息を吐いて教室の天井を見上げた。
蛍光灯がちかちかしてる。
もう外も暗くなってきたし、いい加減帰ろう。
そう思って机の横に掛けた鞄に手を伸ばした時、視界に映った姿に思わずびくりと体が跳ねた。



「電気点いてたから誰がいるのかと思って」


そう言って入り口のドアに立っていたのは練習着姿の真田だった。
今でも真田を好きな気持ちは変わらないのに、真田の顔を見ると途端に気まずさでいっぱいになる。


「あ・・・本、読んでたら遅くなっちゃって」
「ふーん。名前が読書なんて珍しいな」
「そう、かな」


二人きりで話すのは久し振りで落ち着かなくて、無駄に鞄の中を探ってみたりとそわそわしてしまう。
そうする間にも真田はこっちへ近付いて来ていて、私の机に置かれた本を手に取った。


「何読んでたんだ?」
「あ」


しまった。
ブックカバーしてたからって油断してた。
真田が手に取ったそれは、真田に一番見られたくないものだった。
そのままパラパラとページを捲る。



「野球のルールブック・・・?これ・・」
「返してっ!」


真田の手から本を強引に奪い返して、教室を飛び出した。
頭に血が上ったように熱い。


あの日からこっそり勉強していた野球。
覚えたからって何になるのか分からなかったけど。
自己満足だって良かった。
そうする事で真田に少しだけ近付ける気がしたから。

それを真田に見られるなんて最悪。


早くこの場を離れたくて、廊下を早足で歩く。
後ろからきゅ、と上履きが床を擦る音が聞こえた。






「明日の試合、見に来いよ」


静かな廊下に響く真っ直ぐな声に足を止める。



「完全復活、見せてやるから!」


振り向けば自信満々の真田の顔。
久し振りに直視したその笑顔に、やっぱり胸がいっぱいになる。



「明日勝ったら、前みたいに笑ってよ。つうか明日勝ったら俺の彼女になって」
「・・・・・・うそ」
「嘘じゃねぇよ」
「・・・ま、負けちゃったらその話無し・・?」
「勝つっつーの!」



ピースサインを出して笑う彼のその言葉を、信じようと思った。




やくそくだよ
(あした勝ったら、)


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五万打記念、かすが様リクの真田夢でした。

真田切甘...
いかがだったでしょうか。
真田、やっぱり好きです。
もっともっと格好良く書きたいのに(-_-;)
私の実力ではこれが限界でした・・・

このような代物で大変恐縮ですが、お気に召していただければ何よりです。
かすが様限定でお持ち帰り可とさせていただいておりますのでよろしければお持ち帰りくださいませ(^O^)

この度は五万打企画にご参加いただき、ありがとうございました!
また、日頃よりTRAIN-TRAIN!!にお越しいただき本当にありがとうございます!
これからもかすが様にお楽しみいただけるようなサイトにしていけるよう頑張りますので今後ともよろしくお願いいたします!


2011/10/19 小鳥遊 隼斗




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