企画・記念 | ナノ

クーシェ様へ 三万打記念リク




背が高いところが好き。
さらさらした髪が好き。
私の手を握る大きな手が好き。
広い背中が好き。
名前さん、て呼ぶ声が好き。
ふんわり笑う笑顔が好き。
マウンドに立つ姿が好き。


夕暮れのグラウンドで落書き用のノートに書き出した彼の好きなところ。
駄目だ、切りがないや。
書いても書いても次から次へと浮かんでくる。



「なにしてるの?」
「わ、わわ!練習もう終わり?」
「うん、今日はもう終わり。御幸先輩が早く名前さんのとこ行ってやれって言ってくれたから」


つい今さっきまで御幸を捕まえてブルペンで投げ込んでいたと思ったのに。
いつの間にか目の前に立っていた暁は頭から被ったタオルで汗を拭いながらスポーツドリンクのボトルに口をつけた。


「で、それなに?」


ボトルのキャップを締めながら私が急いで閉じたノートを指差す。
こっそり鞄にしまっちゃおうと思っていたんだけどばれてしまった。
だってこんなの恥ずかしくて見せられないよ。


「好きっていっぱい書いてあった」
「なんでもないよ!」
「見せて」
「だめ。・・あ、だめだってば!」


素早く取り上げられたノートは私の遥か頭上に持ち上げられて、立ち上がって背伸びしてみたものの私の身長では届く筈がない。
仕方なく諦めて暁の反応を伺う事にしたけれど、流れる無言の時間が怖い。
びくびくしていると暫くしてノートで隠れていた顔がこちらを覗いた。


「腕筋が好き、てなに?」
「・・・す、すきなんだもん」


あ・・・その笑顔も好き。
ふ、と笑った暁はそのままノートを声に出して読み上げる。


「年下に見えないところ、天然なところ・・野球馬鹿・・・これ、最後のほう本当に好きなとこなの?」
「もちろん!」


納得がいかないといった顔をした暁はぱらりと次のページを捲った。
私が書いたのはその前のページまでだから、今開いたページは白紙だ。


「ペンかして。僕も書く」
「え?あ、うん」


やっと返されると思ったノートはまだ暁の手元にあって、差し出された右手はペンを求めている。
その手の平にさっきまで私が握りしめていたピンク色のペンを乗せてあげると、私の隣に腰掛けてじーっと白紙のノートを見つめ出す暁。
何を書くか考えてるみたい。
真剣な横顔が格好いい。
さっきの笑顔も、その横顔も後でノートに書き足さなくちゃ。

暫くして何か思い付いたようで、漸くペンを動かしたかと思ったらすぐにその手を止め、ペンとノートを返された。


「もう書いたの?」
「うん」


何が書いてあるんだろう。
なんだかすごくどきどきする。
手渡されたノートのペンが挟まれたページをゆっくり開く。
そこにはど真ん中に書かれた大きめな字で『ぜんぶ』の三文字があった。


「考えてみたけど、ありすぎて書ききれないから」
「ふふ、私もね、書いても書いてもまだまだあって切りがないって思ってたの。同じだね」


暁もおんなじだったんだ。
それがとても嬉しくて、ノートを抱きしめて隣に腰掛ける暁を見上げた。


「ねぇねぇ、暁、す」
「好き、です」


私の言葉を遮るように言った暁。
その言葉は今正しく私が言おうとしていた言葉だった。



「多分同じこと考えてたから」


優しく笑う暁は年下とは思えないくらい大人びていて。
私はまたそんな彼に翻弄される。
暁の大きな手が私の手をそっと握るから、どきどきと煩いくらいに心臓が騒ぎ出した。

好きな人と同じことを考えていたり、同じ言葉を発したりするのってこんなにも嬉しいとなんだ。
今この瞬間、暁も私と同じようにどきどきしてくれてたら嬉しいな。


こっそり彼を盗み見れば、少しだけ赤い耳元と、照れたような横顔が見えた。




きみの好きなところ
(ぜんぶが愛おしくてたまらないよ)


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三万打記念、クーシェ様リクの降谷夢でした。

甘のリクをいただいたのですが御希望に沿えておりましたでしょうか?
高校生らしい甘を目標にしてみました。
好きな人と言葉がハモったり、いま同じ事考えてた!て時って嬉しくないですか?(^^)
それを表現したかったんですけど、文にするのはやはり難しいですね。
降谷夢、初めて書きましたがどんな話にするか候補が出すぎて悩みました。
どうやら私、降谷のことかなり好きだったようです。

クーシェ様、完成まで大変お待たせをしてしまいすみませんでした。
お待たせした上にこのようなもので恐縮ですが、お気に召していただければ幸いです。
クーシェ様限定でお持ち帰り可とさせていただいておりますので、よろしければお持ち帰りくださいませ(^O^)
この度は三万打企画にご参加いただき、ありがとうございました!
れからもTRAIN-TRAIN!!と小鳥遊をよろしくお願いいたします!


2011/07/18 小鳥遊 隼斗




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