▼ 友衣様へ 三万打記念リク 俺の彼女は淡泊だ。 例えば、もうすぐ付き合いだして二ヶ月が経つがあまり手を繋いではくれないし、キスも、まだしてくれない。 だけど昼飯は二日に一度一緒に食べているし、確かにあの日、俺を好きだと言ってくれた。 先に好きだと伝えたのは俺の方だから、女々しいかもしれないけれどやはり少し不安になってしまう。 「名前ちゃん、ほんとは大して倉持のこと好きじゃねぇんじゃねぇの?」 「るせぇ、んなわけねぇだろ」 けらけらと笑う御幸に悪態を吐きながらも、内心穏やかでは無かった。 悶々としたまま午前の授業の終わりを知らせるチャイムを聞いて教室を出る。 今日は名前と昼飯を食う日だ。 天気の良い日は中庭で。 前もって二人でそう決めていた場所へと急ぐ。 陽の当たる中庭に出ていつものベンチを見るとそこにはちょこんと座った名前がいて、俺を見つけるとぱっと笑顔を見せて手を振った。 ほら、あんな風に笑う名前が御幸の言う通りな訳がない。 そう自分に言い聞かせて名前の元に向かった。 「お前来るの早いな」 「へへ、だって楽しみで」 そう言いながら弁当の包みを二つトートバッグから取り出すと、一つを俺に差し出した。 「はい、これ洋一の分」 「さんきゅ」 「今日はハンバーグ入りだよー」 こうしていつも二人分の弁当を作ってきてくれる名前。 もちろん味だって絶品だ。 美味いと言えば嬉しそうに照れ笑いする。 その笑顔がすげぇかわいいんだ。 「なぁ、手かして」 「え?なんで?」 「繋ぎたいから」 「いや、でもお弁当のソースで汚れちゃったし・・・」 「さっき拭いてたから平気だろ」 「そうだけど・・」 「・・・・・・」 手を繋ぎたいと言ってみれば途端に慌て出し、やっぱり素直には繋いでくれない。 何でだよ。 そんな反応されたら、益々名前の気持ちを疑っちまう。 「・・じゃあキスは?」 「は!?え!??む、無理無理っ!ここ学校だよ!?誰かに見られ」 「うっせ、そんなの関係ねぇよ」 俺を牽制するその細い腕を捕まえて唇を奪ってやった。 怒られたっていい。 ただ、名前の本心が知りたい。 俺ばっかりが好きだなんて信じたくねぇ。 「・・・・・・・・」 「・・・名前?」 怒られると腹を括っていたが、目の前の名前は何も言わずに俯いたままだ。 怒らせるどころか泣かせてしまったただろうか。 そっと前髪に隠れた顔を覗き込んでみる。 「なぁ、名前・・・!」 覗き込んだ先の表情を見て思わず目を見開いた。 泣いているかと思ったその表情は、耳まで真っ赤に染まっている。 俺と目が合うと名前は急いで両手で顔を覆った。 「どうした・・」 「ダメなの!恥ずかしすぎてこうなっちゃうって分かってたから出来なかったの・・!」 「じゃあ手繋いでくれないのは・・・?」 「それは私・・洋一と手を繋ぐと緊張してすごい掌に汗かいちゃうから気になって・・・」 「は・・・」 両手でまだ赤い頬を包み込んで目をぎゅっとつむりながら言う名前に思わず間抜けな声を出してしまった。 俺がこんなにも悩んでいたというのに。 手を繋いでくれないのはそんな理由だったのか。 「・・ヒャハ、そんなこと気にしてたのかよ」 「そんなことじゃないよ!重要だよぅ・・・」 それにね、と続ける名前は初めて自分から俺の手を・・・と言っても指先だけれども、そっと握った。 「幸せすぎて怖い」 「怖い?」 「うん。洋一依存症になっちゃいそうで怖いよ」 「ほんとはもっと沢山、く、くっつきたぃ・・・」 尻すぼみになる声とまた真っ赤になる名前の顔。 その姿に堪らず名前をぎゅっと抱きしめた。 「なればいいじゃねぇか。ずっと側にいてやる。それなら怖くないだろ」 腕の力を強めてみれば、名前は更に顔を真っ赤にさせてこくこくと頷いた。 倉持依存症 (だってそれって、富士の病でしょ?) ---------------------- 三万打記念、友衣様リクの倉持夢でした。 甘甘?・・え、えぇ、甘甘だと言い張りたい。 本当はもっとイチャイチャしたいけど極度の恥ずかしがりやで赤面症なヒロインにしたかったんですが、うまく伝えられたでしょうか。 お待たせした上にこのようなもので大変恐縮ですが、お気に召していただければ幸いです。 友衣様限定でお持ち帰り可とさせていただいておりますので、よろしければお持ち帰りくださいませ(^^) この度は三万打企画にご参加いただき、ありがとうございました! また、日頃よりサイトに足を運んでいただき本当にありがとうございます! これからもTRAIN-TRAIN!!をよろしくお願いいたします。 2011/05/26 小鳥遊 隼斗 [back] |