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四季様へ 三万打記念リク




御幸が好きだ。

だけど好きだなんて本人に言うつもり無かったのに。
自分に自信があった訳じゃないし、何より勝てないと分かっていた。



私の最大のライバル、野球という存在に。






「ごめん。野球の次に・・・名前が好きかな」


先日私がうっかり漏らしてしまった告白の返事はそれだった。
分かってたよ。
分かってたけど、御幸の口から直に聞いてしまうとやっぱりダメージは大きい。
野球の次に好きだなんて期待させるようなことを言うのは、御幸のずるいところだと思う。

諦めなくちゃいけないのか好きでいて良いのか、分からないよ。


今だって私が沈んでいるとき、一番に私を見つけて隣に居てくれるのは御幸だった。


「なんで来たの…」
「名前が礼ちゃんに怒られてへこんでると思って」


・・・当たっているから言い返せない。
マネージャーの仕事でミスを犯した私はついさっき礼ちゃんに少しきつめのお説教をくらった。
なんであんな下らないミスをしてしまったのか悔しい。
でも例え悔し泣きでも、自分のミスで泣いている姿なんて皆に見せられないから。
こっそり部室の裏で一人うずくまっていたのに、御幸はそっと私の隣にしゃがみ込んで、ただ隣に居てくれた。

嬉しいけど嬉しくない。
少し前だったら手放しで喜べた筈なのに。


「別に御幸が来てくれなくたって平気だもん」
「いや、実は俺が名前の側に居たかっただけだったり」
「なに、それ・・もういいよ、やめて。余計つらいよ・・・」


悔し涙とは別の涙が溢れそうになって、急いで膝に顔を埋めた。
野球の次に好きだなんてよく分からない曖昧な立ち位置なんていらない。
こうして期待させるだけなら、いっそ思い切り振ってくれた方がましだ。



「俺さぁ、キャプテンだし恋愛なんかしてる場合じゃねぇって思ったんだ」


御幸の手がそっと私の指先を握った。
大きなごつごつした手。
この手に触れるのはこれが最初で最後なのかもしれない。
そう思ったら、いっそ止めを刺してくれって思ったはずなのに喉の奥がぎゅっと痛くなった。

御幸の言う事は分かる。
彼はキャプテンでありキャッチャーという重要なポジションを任されている。
その重圧はきっと計り知れないものだろう。
十分分かっていたのに、どうして気持ちを伝えてしまったんだろう。
悔やんでも悔やみ切れない。
きっと次の言葉を聞いたら、この手を離さくちゃならないだろう。


あともうちょっとだけ。
そう思って少し強くその手を握り返してみたら、その手は予想外に強く握り返された。


「でも俺、全然駄目なんだわ。苗字の気持ち知ったら」
「・・迷惑だったよね」
「違う、そうじゃなくて」
「・・・・どういう事?」


御幸の言いたいことが分からなくて。
膝に埋めていた顔を少し上げると、ぐらりと視界が揺れた。


「こうゆうこと」


捕まれた肩が熱を持つ。
でもそんなのすぐに忘れるくらい、少し強引に重ねられた唇の方が熱い。
突然すぎて目を閉じる間も無かった私は、ゆっくり離れていく御幸の顔をただ視界に捕らえていた。


「名前がいないと逆に駄目んなる」
「でも野球の次だって・・」
「そう自分に言い聞かせようとしたんだけどな」


無理だった、て少し笑って言う御幸にどうしようもない愛しさが込み上げて、両腕を背中に回して思い切り抱き着いた。

私の背中を優しくぽんぽん、と叩いてくれる御幸の掌。
耳元で聞こえた、好き、と言う御幸の声。
彼の胸に片耳を押し付けて聞いたそれは、骨の髄まで届く甘い声だった。





voice
(もっときかせて、他になんにもきこえないくらい)



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三万打記念、四季様リクの御幸夢でした。
大変お待たせして申し訳ありません。
切甘のリクをいただいたのですが上手く切から甘に切り替えられたでしょうか・・・m(__)m

お待たせした上にこのようなもので大変恐縮ですが、お気に召していただければ幸いです。
四季様限定でお持ち帰り可とさせていただいておりますので、よろしければお持ち帰りくださいませ(^^)

この度は三万打企画にご参加いただき、ありがとうございました!
また、日頃よりサイトに足を運んでいただき本当にありがとうございます!
これからもTRAIN-TRAIN!!をよろしくお願いいたします。

2011/05/22 小鳥遊 隼斗




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