短編 | ナノ

この足はきみのために




「俺今日ツイてるかも!」


昼休み、購買で販売機からパックジュースを取り出そうと屈んだとき。
横から歩いてきた二人組の声が耳に入ってくる。
隣のクラスのサッカー部の奴らだ。



「さっき名前ちゃんのパンツ見えた」
「まじで!?」



なん、だと・・・?

今すぐそいつの目を潰してやりたい衝動にかられたが、そんな事より先にやるべきことがあるだろう。

名前がいるであろう教室まで全力疾走。
俺の駿足はこんな時の為にあるわけじゃない筈なんだが。


教室に着けば名前は体育座りで女子数人と無邪気に笑いあっていた。
その目の前にはちゃっかり御幸が座っている。


あの眼鏡・・・殺す・・!


バッグをひっくり返すようにして、練習で使う予定だった少し大きめのタオルを掴んだ。
そのまま名前の方まで歩くと御幸を蹴飛ばし目の前にしゃがみこむ。


「よ、洋ちゃん?」


突然の事に驚き目をしぱしぱとさせている。
そんな顔も可愛いが、今はそれどころではない。
素早く膝にタオルを掛けてやると俺の顔とタオルを交互に見ている。


「バカ名前!!少しは警戒心を持て!」
「けいかいしん?」
「御幸はここでお前と話すふりしてパンツ覗いてたんだぞ!」
「・・・・・・・・え!?」


また膝のタオルに視線を戻し、ようやく事態を飲み込んだ名前は声を上げた。


「はっはっは、たまたまだろ。人聞きの悪い事言うなよ」
「テメェは黙ってろ」


名前はと言えば体育座りを止め、正座をした足の上にタオルを掛けていた。
今更おせぇよ・・
一体何人の男が名前のスカートの中を覗いたのだろうか。


そいつらの記憶を片っ端から消してやりたい。


「お前もうスカート禁止だ。朝学校来たらそっこージャージに着替えろ」
「えぇー・・・」


ちゃんと気をつけるから許して、なんてシャツの袖を捕まれて言われたら、簡単に許してしまうだろうが。
そんな俺の姿をニヤニヤと眺めているクラスメイトをぶん殴ってやりてぇ。



「でも洋ちゃん、この為に走ってきてくれたんだね」
「あ?」
「だって」


名前は立て膝で手を伸ばすと、渡したタオルを俺の顔に優しく当てた。


「汗かいてるもん。ありがとう」


ふにゃりという擬音がぴったり合いそうな愛らしい笑顔でそう言う名前。
あぁ、だからその顔もダメだっていつも言ってんだろ。

今すぐこの場で抱きしめたくなる。


頼むからその無防備な姿を
俺のいない所では見せないでくれ。





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