短編 | ナノ

perfume<nature!




「御幸くんってほんとおもしろいねぇ」
「いやーそれ程でもないけど」
「あたしもねぇ・・」


がやがやとした昼休み。
教室の一番後ろに一際賑やかな集団。
野球部の御幸と倉持と、その席周辺に群がる甘ぁい声で喋る煌びやかな女子たち。
いつの間にか煌びやか集団に囲まれてしまったらしい倉持はうざったそうにしてるけど、御幸は満更でもないって顔。

その集団に腰掛けられている、椅子と机は私の席なんだけど。

私は彼是15分、自分の席に座れず友人と教室前の廊下に座り込んでいた。
御幸の隣の席は私の席なのに。


御幸の腕に伸ばされる爪先まで綺麗に飾られた手。
見なきゃいいのに。
見たってもやもやして苦しくなるだけなのに。
気になってしまうのは、全部御幸のせいだ。

私だって私なりに身なりには気を使っているけど、がっつりメイクの巻髪のキラキラしたあの子達のようなグループにはどうも馴染めない。



「ぁ、私現国の教科書忘れたんだった!」
「あら、やっちゃったね」


しまった、という顔をして友人が立ち上がった。
すぐ戻るから待ってて、と言われ、一人廊下に残された私は携帯を取り出しいじりだす。
暫く座り込んでいると、よたよたと倉持が歩いてきて私の隣にどかっと座った。


「どうしたよ」
「あいつらくせぇ」


くせぇ、て・・・
可哀相に。
倉持が言ったくさい、とは彼女たちが体に振りかけている甘ったるい香水の事だ。


「あいつよく堪えられるな」
「御幸?」
「あぁ。俺あれ以上いたら吐いてたな。ぜってー」


倉持は自分に匂いが移っていないかを確認するように、自分の制服をくんくんとしている。


「御幸はあぁゆうの好きだから平気なんでしょ」
「は?お前それ本気で「なーに楽しそうにしてんのかな?」


倉持の言葉を割って入ってきたのは、さっきまで教室の中に居たはずの御幸。


「ないしょー」
「ヒャハ!」


私の席を陣取って楽しそうにしてた仕返しに、ねー、と倉持の方を向いた。
けど、倉持と笑い合うのもつ束の間。



ドカっ


「よっこいしょっと」


音を立て倉持を突き飛ばし、間に無理矢理入ってきた御幸。
さっきまで私の隣にいた倉持は少し横に転がっていた。


「テメェ・・コラ、逆側座ればいいじゃねえかよ!」
「はっはっは、いや何かむかついたもんで」


倉持は舌打ちをしつつも、そのまま御幸の隣に落ち着く事にしたらしい。

てかさ、


「なんか近くない?」
「そう?」
「うん」
「はは、気のせいだろ」


私の肩が御幸の逞しい腕に当たる。
御幸の声が私のすぐ耳元で聞こえる。
気のせいなんかじゃない。
明らかに近すぎる距離。

私の気なんて知りもしないで。
御幸のこうゆうところ、むかつく。


「あー俺やっぱこの香りが一番好きだわ」


なんの事だ、と思った矢先。
くん、と御幸の顔が私の髪を掠める。


「な・・っ!?」


驚いて御幸の方を向けば、目の前にあったのは御幸の顔で。
逆効果だ。
余計に顔が熱くなるのが分かった。


「名前の髪の匂いやばい好き。落ち着く」
「ふ・・ふざけんなっ、あんたシャンプーの匂いがする子だったら誰でもいいんでしょ」
「お前だからに決まってんだろ」
「嘘だね」


嘘。
絶対に嘘だ。
こうやって私に期待させるのは、御幸の得意技だ。

今だって、私の髪に指を通しながらそんな優しい視線を送らないで。



「俺かなり前から名前の事好きなんだけど」
「う、そだぁ・・」
「うそじゃない。好き」




こんな廊下で、とか
倉持はどうした、とか
考える事はたくさんあるけど、


どうしたら信じてくれる?

なんてらしくない台詞を言ったりするから。
困ったような顔をするから。
私はうっかりお調子者の御幸の言葉を信じてしまう。


気づいたら御幸に
好きだよ、て伝えていた。





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