短編 | ナノ

小悪魔のわな




「名前ちゃんさー、俺の事好きでしょ」
「・・・はぁ?どこからその自信が湧いて出てくるわけ」
「直感?」
「うざ、肩を離せ。くっつかないで」


御幸の毎日のアタックをこれでもかという程拒絶する女。
最近の教室で繰り広げられるお決まりのパターンだ。

御幸の手を叩き落とすこの女子は、クラスメイトの名前。


外見は可愛らしく、何と言ってもこのサバサバした性格が良いんだとそこの馬鹿が言っていた。
確かに、他の女子とは少し違う。
どちらかと言えば俺だって好みのタイプだ。


「今日もつれないなー名前ちゃん」
「当たり前じゃん。あたし御幸嫌いだし。倉持派だし」




え?


今まで隣の席で傍観していた俺は心底驚いたわけで。
こんな時どんな反応をしたら良いかわからねぇ。

野球に没頭するあまり、経験不足が仇となる。


「まじで!?じゃあ倉持と付き合っちゃうの?」


俺より先に食いつく御幸。
俺だって男だし、名前をいいな、とは思っていたけど好きだと自覚した事は無かった。
けれど何故だか物凄く緊張して、ごくりと喉が鳴った。


「んー・・・でも倉持って乙女心わかんなそうだから付き合ったら疲れそう」






「・・・・・・」
「・・・ぶっ・・!!」


横目でじろりと御幸を見れば、腹を抱え声を殺して笑っている。
いや、声が出せないくらい笑ってやがる。



「んじゃあ、あたしバイトだから帰んね〜」


呆然とする俺と腹を抱える御幸を横目に、名前は鞄を持つとヒラヒラと手を振り教室を出ていく。
ドアを潜り姿が見えなくなったと思えば、ひょこ、と顔と右肩だけをドアから覗かせた。







「御幸は嫌いだけど、やっぱ倉持は結構好きだよ」


にっと笑うと名前はじゃあね、と再び姿を消した。


そんな名前の爆弾発言に俺の中で何かが確信に変わったのは確かだった。



「・・名前ちゃんって小悪魔だな〜」
「・・・・・・」
「そして絶対ツンデレだよなぁ」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・」





「倉持さ、名前ちゃんの事好きだろ」
「す、すきじゃねー!!」


俺は熱くなった顔を隠すように背を向けると乱暴に鞄を持ち、御幸を置いて教室を出た。


「素直になんねーと俺に取られちゃうぞ?乙女心のわからない倉持くん♪」
「るせーっ」


無駄にグラウンドまでダッシュしてみたり。



あぁ、俺はこれからどうしたらいいんだ。







どれだけ走っても、どれだけ白球を追い掛けても


思い出すのはきみの笑顔ばかり。





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