短編 | ナノ

拍手07



禁煙生活を初めて二週間。
今まで一週間と持たなかったこのあたしがこんなにも禁煙出来てるなんてこりゃ快挙だ。
きっとこのまま止められるな。
一人デスクでふふんと笑う。


禁煙して良かったこと。
肌荒れが改善されて化粧の乗りが良くなったこと。
禁煙して残念なこと。
喫煙スペースに行かなくなったせいで純さんに会う回数が減ってしまったこと。

先月の異動でうちの部署から総務部へと栄転した純さん。
違う部署になっても喫煙スペースへ行けば会うことが出来たけど、禁煙を始めた今それも無くなって会う回数はぐんと減ってしまった。

今日は偶々こっちで打ち合わせがあったらしく、会議室から出て来てうちの部長とすぐそこで立ち話をしている。
うちの部署で会議をした後、いつも決まって純さんは私を喫煙スペースに誘う。


「なぁ、煙草部屋行かねぇ?」


やっぱり。
今日も例外ではなく、私のデスクの横に立った純さん。
その顔を見上げると何かを思い出したらしく、あ!と口を開けた。


「禁煙してんだっけ?」


頭では何て断ろうとか色々考えてみたけど、それより先に私の右手がデスクの一番上の引き出しを開けて奥に追いやられていた箱を掴んだ。


「禁煙?まさかぁ、そんなの止めました!」
「だよな、お前が止められる訳ねぇと思ったよ」


にかりと笑う純さんに笑顔を返して立ち上がると喫煙スペースへと一緒に歩き出す。

そうですよ。
あなたがいる限り止められません。
ていうか…いつでも手の届くデスクの中に煙草をしまっていた辺り最初からこれを期待してたんだろうな、あたし。
はは、笑っちゃうね。


「なに笑ってんだ?」
「なんでもないでーす」
「変なやつー」


一人口元を緩めて煙草部屋に白い煙を吐き出した。
やっぱりこの時間はそう簡単に捨てられないよなぁ。



禁煙失敗




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