短編 | ナノ

拍手04



放課後の中庭で泣いている親友を見つけた。
さっきまで教室で今日はデートだとはしゃいでいたのに。
べつにそのままスルーだって出来たのに、自然と足を進めていた。


「デートじゃ無かったのかよ」
「フラれた。それくらい察してよ」


声を掛けると、名前はごしごしと目元をカーディガンの袖口で拭いそっぽを向く。
その横顔は目も鼻も真っ赤だ。
隣に腰掛けると、驚いた顔をしてこっちを振り向いた。


「なんだよ」
「そっちこそ。なに座ってんの」
「名前が泣き止むまでここにいようかと思って」
「・・・練習は?」
「まぁ、やべぇな。だから早く泣き止めよ」


そう言ってやればきょとんとした後に吹き出した。


「なにそれ」
「うっせ。‥お前は泣いてるよりいつもみたいに笑ってる方がいい、と思う」


いつも絶えないこいつの笑顔は決して汐らしい笑顔ではないんだけど、顔全部で笑っているようなその笑顔は元気をくれる。
俺はその笑顔を悪くは無いと思う。



「倉持って元ヤンだしさ、人相も悪いしさ、野球バカだよね」
「テメェ喧嘩うってんのか?」
「でもさ、優しいよね」
「あ?お、おぉ」
「ありがと倉持、元気でた!」


名前はそう言うと勢い良く立ち上がり、まだ赤い目をしていつもの笑顔でじゃあね、と笑い、颯爽と立ち去った。
一人ベンチに取り残された俺。




やべぇな。
いまあの笑顔が俺だけに向けられればいいって思った。




ひとりじめ




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