短編 | ナノ

拍手03




「文化祭に来てた人って倉持の彼女?」


どうしてこんな分かりきった事を改めて聞いたんだろう。
文化祭の代休明けの朝の教室で、私はその分かりきった答えを待つ。



「そうだけど」
「すごいキレイだね」


怪訝そうな顔をした倉持にそう言えば、だろ!と言って嬉しそうに笑った。
のろけてんじゃねーよ。

でも、綺麗な人だった。
年齢は私達より少し上だと思う。
だけど、倉持が女の子に囲まれて少しいじけたときに見せた顔は可愛くて。
倉持には勿体無いくらい綺麗で可愛い人だった。



数ヶ月前からやたら倉持が携帯電話を気にし出したことに気が付いた。
今までそんなに携帯をいじってるイメージが無かったから彼女が出来たんだってすぐに分かる。
だって携帯を見る顔が時たまニヤけてるから。

暫くして女の子たちの間で、倉持が年上の女の人と一緒にいるのを見たって噂を頻繁に聞くようになった。
私は見たことがない。
それをとやかく言う子もいたけど、当の倉持は今までにないくらい充実している顔だ。
毎日が楽しそう。




「倉持が年上の人と付き合ってるって噂、本当だったんだね」
「え?あぁ。文化祭で見た?」
「うん」


たまたま昼休みの購買からの帰り道で一緒になった御幸。
隣に並んでみたけど話すことはそれくらいしか浮かばなかった。


「すっごいキレイだった!びっくりしたわ。どんな人なの?」
「うーん‥倉持の彼女にぴったりすぎる人、かな」
「‥へぇ。よく分かんないけど何か分かる」
「はは、なんだそれ」


笑った御幸に釣られて私も笑う。
幸せそうにするあいつのいる教室が見えてきた。
今日もあいつはニヤけながら携帯電話を開く。

私は結構、いつも倉持を観察していた。



私はちょっと、




倉持が好きだった。




悲しくはないのだけれど




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