短編 | ナノ

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「よういちーっ!!頑張ってねー!」


グラウンドに響く澄んだ声。
みんなが振り向くその声に俺は頭を抱えた。
声の主は校舎の一階の窓から顔を出してぶんぶんと手を振っている幼なじみの名前だ。
早足でそこに近付くと、その頭を軽く叩いてやった。


「お前はいつもいつもうるせぇっつってんだろ!!」
「だってー・・・」
「だってじゃねぇ!目立つから止めろ」
「ぶー、洋一のケチー」


意地悪だのヤンキーだのと騒いでいる名前をスルーしてグラウンドに向かう俺を待っていたのは部員たちのにやにや顔。


「今日も可愛いな、名前ちゃん」
「・・あいつに手ぇ出したら殺すからな、御幸」
「えー、でもお前ただの幼なじみじゃん」
「ぅ、うるせぇ!」


そうだ。
あいつにとっちゃ俺はただの幼なじみ。
だけど名前ががこうして毎日俺に声を届けてくれる。
ただそれだけで俺は何歩も先へ進むことが出来るんだ。



今はまだ、長年の幼なじみという枠から抜け出せないけれど。
これから先も君がエールを送るのは、俺だけであってほしい。




照れかくし




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