▼ 生まれ変わったら、何になりたい? 「あーなんかもう授業とか行きたくないねー」 「だなー。いんじゃね?行かなくて」 「じゃあ御幸が行かなくていいって言ったから行かない」 「あ、てめ、俺に全責任を負わせるつもりだな」 「ふふー、どうでしょー」 心地好い気温にぽかぽかの太陽。 昼休みの屋上で空腹を満たした私と御幸は二人して並んでコンクリートに寝そべった。 少し眩しい空に目を細めて、視界いっぱいに空を映す。 「・・私生まれ変わったら空になろ」 「は?いきなりどうした」 御幸はぐるりと顔だけをこっちに向けて怪訝そうな顔をした。 私はというと、変わらず真っ青な空を見たまま。 吸い込まれそうなその青から目が離せないでいた。 「いつでもどこにいても御幸を見つけられるじゃん。浮気してても他の子と仲良くしてても」 いつだって御幸を見つける事ができれば、不安なことなんてなくなるのに。 いつだって御幸の側にいられるのに。 「つうか俺が浮気するとかって前提がおかしいだろ」 「そう?」 「そう。それに名前は生まれ変わっても名前じゃなきゃ困るんだけど」 「なんで?」 勢いをつけて上半身だけを起こした御幸は、ずい、と私の顔を覗き込む。 目の前が少しだけ薄暗くなって、御幸を象る影が私に落ちた。 「だって俺、生まれ変わっても名前の恋人になりたいし。それなのに名前が空になってていないんじゃ生まれ変わる意味すらねぇ」 いつもだったらふざけて笑い飛ばすような事をそんな真剣な顔で言うから、思わず私は御幸から顔を逸らした。 だってそんな顔ずるい。 いつだって格好良すぎるんだ。 無駄なくらいに。 「じゃ‥じゃあ、仕方ないから生まれ変わっても恋人にしてあげる」 「あ、照れた?」 「照れてないし!」 「・・ずっと、隣にいろよ」 「うん」 私の視界から空は奪われ、今はもう御幸以外なにも見えない。 近付く彼の鼻先を確認して目を閉じながら、やっぱり御幸の隣が一番いいや、なんて思った。 御幸は私の前髪を優しく撫で上げ、優しい口づけをひとつ、私にくれた。 きみの隣。 ただそれだけが変わらない望み [back] |