▼ 指先でふれたロマンチック 13.5 最近、オフの度に純さんのところに入り浸るのが名前の流行りらしい。 オフの日に俺のとこになんか来た試しがない。 だからこの前の貸しに、バッテを選んで欲しいなんて無理矢理こじつけて名前を買い物に誘った。 そうでもしないとまた純さんのところに行ってしまうと思ったから。 そんな毎回毎回行かせてたまるか、と思ったわけだ。 ・・・相当切羽詰まってるな、俺。 名前を家まで送り届けた帰り道。 とある場所で足を止めた。 さっき名前が眺めていた雑貨屋だ。 ふらりと店先を覗き込み、陳列された色とりどりのものの中からピンク色のリボンが付いたヘアゴムを手のひらに乗せる。 かわいーじゃん。 あいつに似合いそうな深い色のピンク。 今日のお礼だと言って渡すのはわざとらしいだろうか。 お礼のお礼なんてあいつが素直に受けとるだろうか。 「・・・・・・・」 暫く考えた後、ヘアゴムを指に引っ掻けてレジへ向かった。 名前が欲しがっていたからってのもあったけど、そんな事より何よりも。 ただ名前に似合うと思った。 店を出て右手に持った紙袋を眺めてから、そっとバッグの中にしまい込む。 特別包装してもらわなかったのは重っくるしい贈り物だと思われたくなかったから。 明日にでも然り気無く渡してしまおう。 そう意気込んで薄暗い寮までの帰り道を歩きながら思い浮かべたのは、ひとつに結んだ頭のてっぺんでリボンを揺らす、名前の笑顔だった。 指先で触れたロマンチック 13.5 (どうか明日も、きみの笑顔が見れますように) [back] |TOP| |