連載 | ナノ

君を手に入れたいと思った日 09



「頭いたい〜・・・・・・」


朝目覚めて寝返りをうつと頭に激痛が走った。
二日酔いとゆうやつだ。

もぞもぞとベッドから手を伸ばし、サイドボードに置かれた置き時計を見る。


え、朝じゃないじゃん。
もう昼じゃん。

時計の針はもう正午に近い。
ふと視界の端に点滅したブルーのランプが見えた。
携帯電話が光っている。
ブルーは新着メールのサイン。
誰からだろ。
だるい体を動かし、俯せになりながら手を伸ばして携帯を開いた。



新着メール1件

倉持 洋一





・・・倉持 洋一?





「・・・・・・あ」


暫く携帯電話の画面に表示されている倉持洋一の文字を見て、昨晩の事を薄ら思い出した。
そうだ、昨日の夜確かに私は倉持くんと会った。
そういえば赤外線しといたとかなんとか言ってたような・・・
いかんせん、記憶が曖昧だ。
マンションの前まで送って貰ったんだっけ?
あぁ、そうだ・・・確か、ちょーっとからかったら真面目に怒られたんだわ。

ぼんやりと思い出してきた昨日の記憶を辿りながら、メールを開いてみる。


『あんまり無理すんなよ。
 おやすみ!』


絵文字の無い、彼らしい短いメールだ。
普段から絵文字をあまり使わない私にとっては、なんの違和感もないメールだった。
けど、あんまり無理すんなよ、の言葉がなんだかすごく胸に染みて、不覚にも部屋で一人微笑んでしまった。

ほんと倉持くんには敵わないな。
どうしてこんなにも人の気持ちを汲み取るのが上手いんだろうか。



「さて、風呂でも入ってくるか!」


携帯をサイドボードに戻すとベッドから起き上がり、着替えを持ってバスルームに向かった。

上がったら返事返さなきゃな。
昨日、迷惑かけちゃったし。
なんて返そう。
昨日はありがとう?それともごめんね?
きっと今日も練習だろうから、お疲れ様、か?



・・・・・・ん?


何でこんな真剣に色々考えてんのかしら。
がしがしと泡立てながらシャンプーしていた手を止めてふと思う。
メール1通くらいさくっと返せばいいだけじゃん。
どうしたんだ、私。




「・・・・・・・・・」



・・・いや、まさか。
違う、違う。
たかがメールを返すくらいでこんなに悩むなんて、相当暇なんだな、私。
うん、そうだ。

一瞬頭を過ぎった考えを払拭するように、シャワーを頭から被りシャンプーを洗い流す。


少しでも優しくされるとつけ上がるのは、私の悪い癖だ。




ないない。
そんなの絶対ありえない。




たかがメール、されどメール?



back




TOP




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -