まじで別れる5分前
自分とタイプの違う人間だからこそ、うまくお互いを支え合えると思った。
「じゃあ、あたしに不満はないのね」
「…うん」
これは少し嘘だ。確かにあやかは意思が強くて芯がぶれないし、何事も自分を信じてやり抜こうとする。しかし時々それが強すぎて、周りの意見を聞かなかったり思った通りに行かないことにかなり凹んだりすることが多い。
そういうときに、ちょっと疲れるなぁっては思う。
「あたしは…あたしはずっと不満だった」
「…え」
うそ、ここで真っ正面から悪口言われるパターンですか? 俺は言わなかったんだから、あやかも言わなくてよくない?
「あたしがイルマのことを考えて色々言ってあげるのに、イルマはその場しのぎに謝って、結局何も変わらないし。あたしが何かしてあげても、お礼言うだけで態度で返してくれたことないし…」
あら、まじで噴火しちゃう? もう溶岩が見え始めてるよ。避難してもイイデスカ?
「呆れるくらいマイペースだし、学校もバイトも行ってないし、お金に頓着なさすぎだし、ノリは軽いしハーフだしかっこいいし…!」
「え、最後悪いとこじゃなくない?」
「あたしじゃ釣り合わないっつってんの! イルマみたいな長身金髪ハーフイケメンとガリ勉地味なあたしが釣り合うわけないじゃん! あたし…イルマと一緒に歩くのが、恥ずかしかった…」
「……」
あやか、そんなふうに思ってたのか。知らなかった。あやかは、俺といるの恥ずかしかったんだ。
「ごめん」
「…何に対しての謝罪?」
「……」
「イルマはいっつもそうだよね。なんでもかんでも謝ったり、かるーくサンキューなんかで済まそうとするよね。イルマの悪い癖」
ごもっともです。ぐうの音も出ませんあやかさん。
「もうイルマに振り回されるの疲れた。あたしばっかり一所懸命で、付き合ってるのに片思いみたい…。どうせイルマはかっこいいから彼女選び放題だし、あたしじゃなくても誰でもいいんだろうけどね」
「! それは違うっ。誰でもいいなんて思ってない。あやかだから、あやかが告白してくれたから付き合ったんだよ。それに俺、あやかといて恥ずかしいなんて思ったことない」
俺の必死な言葉に、あやかはフッと笑った。今日初めて見るあやかの笑顔は、俺と多分自分を嘲ったものだった。
「それ、何人の元カノに言ったの? それでヨリを戻してくれた子、何人いた?」
「……っ」
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