Let'sコンビ…ニ…?



しかし時たまこんなふうな予想以上の反応をされることがある。

どのタイミングでそうなるのかはわからないが、そんなとき俺は自分のイケメン度が一瞬だけ跳ね上がったのか? などとしょーもないことを考えていたりする。

「チラッとしか見えなかったけど、絵、お上手ですね」

少しだけ見えた絵から、どうやら少女マンガらしいことがわかった。繊細な細い線で髪がサラサラのイケメンくんが描かれていたと思う。

「ほ、ほんとですかっ!?」

いきなりお姉さんがガバリと顔を上げ、目を見開いて訊ねてきた。しかし俺を視界に入れたとたん、真っ赤に顔を染めてしまった。

…なんかそんなに大きく反応されると、こっちまで恥ずかしくなってくるな。

少々照れた俺は誤魔化すように笑って、その問いに答えた。

「ほんとですよ。なんか、繊細さとか柔らかさが出てる感じでした。…もしよかったらもう一度見せて頂けませんか?」

そう聞くと、お姉さんは動揺したように口をパクパクした。

真っ赤で口パクパクして、金魚みたいで可愛いな。

おっと、金魚は失礼か。

ちょっと脳内反省したときに、エレベーターがチーンと鳴って止まった。

「……ははっ、着いちゃいましたね。残念だけど、また今度是非見せてください」

エレベーターを降りながら少し笑った。タイミングがいいんだか悪いんだか。

お姉さんは何故かエレベーターを降りるのにひどく苦労しているようだった。

「俺、805号室の入間と言います。お暇がありましたら声をかけてみてください」

絵が見たいのはほんとだからな。俺は芸術が好きだ。意外だとも、やっぱりなとも言われる。

「それじゃ、失礼します」

さて、コンビニだ。何を買おうか。パンかおにぎりかラーメンか…。あえてのアイスという手もある。

建物の外へと歩き出したとき、唐突に声を掛けられた。

「あ、あの! 私、605号室の、よ…吉川ですっ! 今度、うっ、伺ってみます!」

あまりにも必死な姿に、ちょっと笑ってしまった。

いかんいかん、必死な人を笑っちゃいかんぞ。

「はい、いつでもいらしてください。でももし爆睡してたら…ごめんなさい」

ちょいとばかり茶目っ気を含ませてみた。もちろんギャグだ。

可愛いお姉さんの一生懸命な姿に癒された俺は、真夏の容赦ない太陽に焼かれながらコンビニへと急いだ。

 

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