おはようアレキサンダー



目が覚めると、時計は午後2時半あたりを示していた。

多少ボーッとする頭で、今日は何時集合だっけ、と考える。

ハルさんとイチさんの学校が終わるのが、だいたい4時くらいだったはずだ。

不良のくせに一応1日学校にいるあの2人は、同じ高校に通っているらしい。しかもクラスまで一緒だとか。初めて聞いた時は笑ったなぁ。2人が同じ教室で授業を受けているなんて、ちょっと信じられない。

しかしもっと信じられないのがジンの方だ。

あの、あの! ジンが、なんと全寮制男子校などという場所に通っているらしい。その上さらにぶったまげるのが、1年生にして生徒会長を務めているということだ。

ジンが、生徒会長。想像できない。確かにあいつは頭がいいが、コミュニケーション能力が著しく低い。その存在感で注目を集めることはできても、朝礼やイベントで壇上で挨拶したり、みんなを盛り上げたりする姿が浮かんでこない。

チームでもリーダーを担ってはいるが、そういうのはほぼハルさんやイチさん任せなんだから。

しかし、話によれば、学校ではうまくいってるらしい。たまに様子を聞くと、先週のイベントのあれが面白かったとか、食堂の新メニューが割とおいしかったとかいう感想が返ってくる。

俺はその答えにいつもホッとし、ジンを応援したり、自分もちょっと学校に行ってみたくなったりする。

よくジンは、無表情無感動の空っぽ人間なんて言われるが、近くで接してみれば案外普通の人間であることがわかる。

負けるとわかってていつもイチさんとバイクで勝負するのは、あいつが割と負けず嫌いだからだ。

不良であるのに無闇に弱い生き物や一般人に手を出さないのは、興味がないのではなく、人を労る気持ちがあるから。中学の時に、不良どもに荒らされた花壇の花をせっせと植え替えているのを発見したときは、腹を抱えて爆笑させてもらった。その後もちろん俺も手伝ったけど。

表情だって、僅かだがちゃんと変化する。俺がふざけると、声に出して吹き出すことだってある。笑うあいつはかわいい。尻尾をパタパタする犬みたいだ。

ベッドからゆっくりと起き上がり、頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜる。ジンいわく、寝起きの俺は雰囲気がトトロなんだそうだ。

メイの真似をして俺の腹に乗っかり鼻を撫でてくるジンに、俺は「ぐわぁ〜お〜」とトトロ語を返してはふざけ合った。

小学生時代のいい思い出だ。

 

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