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あやかの前に付き合ってた子も、似たような理由で自分から別れを告げた。
俺には嫉妬や独占欲の欠片もない。それは、まだ、俺にそこまでの愛情がないからなんだろう。一体いつになればそんな感情が芽生えるのだろうか。どこでそんな相手に巡り会えるのだろうか。
……って、なんじゃこの乙女思考回路は! 中2の女子か! 自分で思ってて恥ずかしいわっ!
「俺も燃えるような恋がしてみたいっすわ」
ようやく熱の引いた顔から手をどけて、ふざけ気味に笑いながら本音を言ってみた。
そして話題を変えようとハルさんの様子を窺う…
「してみるか」
…………え?
ハルさんが、おそらく俺の知る最高レベルに真剣な顔でそう言った。
真っ黒な双眼に目を奪われる。息をするのも忘れるくらいに。
「燃えるような恋がしたいんだろ」
この展開はなんぞや、とか、ハルさんが恋とか言った、とか。
そんなことはすっかり頭から飛んでいて。
近付いてくる少し日に焼けた彫りの深い顔に、その唇に、時を止められたようだった。
「俺と、してみるか」
何も考えられない。
身体も、瞼さえも動かない。
声なんて出せるはずもなくて。
何もかもすべてを、目の前の男に支配されている。
そう確信した時だった。
バァン!
「イルマぁ!! ハルに襲われてね…え……か………」
世界が、見事に打ち破られた。
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