「おまえ、自分で思ってるよりかなりいい男だぞ。顔よしスタイルよし…いや『よし』なんて軽いもんじゃなくて、俺ん中でも最上級だ。もはや国宝レベルだな。なのに人を見下したり傲慢だったり偉そうにしたり金で釣ったりしない。いつも笑顔だし相手を思いやる心もあるし、おまえといるとずっと楽しいしな。その上礼儀正しいし、目上を敬うことも知っている。さらにどんな事にも楽しみを見出す天才だ。おまえの笑顔はめちゃくちゃかわいいんだぞ。…おい、顔隠すなよ」

途中から聞いていられなくなって、解放された両手で顔を覆っていた。それをハルさんがどかそうとしてくるので身体を丸めて逃げる。

「やだ。だめ。むり。なんでそんなこと言うのハルさん。俺今バカみたいに顔熱いって。俺そんな立派な人間じゃないよー」

そう、俺はそんな立派な人間じゃない。勉強も仕事もしないだめニートだし、親のすねかじって遊びまくってるし。相手を思いやる意識もないし、ただ自由奔放にふらふらしてるだけだ。責任感も使命感も、やる気さえない社会から置いてきぼりの俺は、底辺よりさらに沈んだ最下層人間だ。

なのにこんなに誉められると…嬉しくて恥ずかしくて仕方がない。

「…おい、目だけでもこっち見ろよ」

ハルさんにそう言われてしまったので、そっと目だけのぞかせて見上げた。あーきっと眉とか情けなく下がってんだろーな…。

「そんだけあのマジメっ子をいい子だって言っておいて、なんで自分から別れたんだ?」

う、さすがハルさん、痛いとこを突いて来なさる…。しかし別に隠したいことでもないので一応自分の考えを告げることにした。

「…愛せる自信がないんすよ。あやかの気持ちに答えることができない。告られたときは嬉しかったし可愛い子だったからキュンときて付き合ったけど、やっぱ付き合ってくうちに違うなって。何が何でもあやかが欲しいって気持ちにならない。あやかが学校の男子に告られたって聞いたときも、寂しいけどあやかがそいつを選ぶなら譲る気満々だったんすよ、俺」

思えば、昔からそうだった。好きな子ができて付き合うために色々考えても、その子が別の奴を選ぶと自分でも驚くほど素早く身を引いた。そしてその子が俺じゃない奴と笑い合うのを見て微笑ましく思う自分に愕然としてきた。

俺の気持ちはそんなもんなのかって。



[ 19/35 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -