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「いや減る。おまえの中の何かが確実に減る。ついでに俺の中のもなんか減る」
そんなに減るのか。知らなかった。俺は知らなかったぞ。
さっきとは打って変わって、ハルさんは脱力したようだった。それに合わせて俺も全身の力を抜いた。
「おまえなんでフラれたんだ」
「だからぁっ、お、れ、が、フったの! …待て、今思い返してみればあの会話は俺がフラれる側だったよな。なんか俺が一方的に悪いみたいな。いや確かに俺はだめ人間だけども」
ひとり脳内を音声で表現していると、ハルさんがまたため息をついた。
「あのマジメっ子になんて言われたんだ」
なんて…? なんて言われたっけ?
「えと…呆れるくらいマイペースで金に頓着なくて、ニートで軽くてハーフでかっこよくて…」
「待て。おかしいのが2つほどあったぞ」
今俺は一生懸命頭をひっくり返しているので、ハルさんのツッコミはとりあえずスルーさせていただく。
「釣り合わないから一緒にいるの恥ずかしいって…。それからイルマはあたしじゃなくても誰でもいいんでしょって。違うって、あやかだから付き合ったんだって言ったら、そのセリフで何人の元カノとヨリ戻してきたの? って言われちまいました」
あれ、俺だいぶ不憫な子じゃね?
「…おまえあのマジメっ子で2人目だろーが。それは言わなかったのか?」
「俺にだってプライドがあるんすよー。こんなナリで過去2人って…! しかもあやかとヤるまで童貞だったとか…! 言えるわけねぇとか思ってるうちにあやかがイルマだからしょうがないとか、もう新しい子に目星つけてんでしょとか…。ちょっと待ってよあやかさーん。俺そんな奴じゃないってー」
だんだんその時を思い出して心底嘆いていた。誤解だよー。君は俺をどんな色眼鏡で見てたのさ…。
「おまえ…不憫な奴だな」
ハルさんが哀れんだ同情の眼差しを落としてきた。…痛いよハルさん。
「それで最後にコーラかけられてサヨナラか。まったく、もったいないな」
そんな憂いを帯びた声で言わなくてもいいじゃないか。
「わかってますよ。あやかがいい子ってことは。見た目も小さくて飾ってない感じが好きだし、俺なんかより断然しっかりしてて頭もいいし、ちょっとたまに頑張りすぎるけどみんなを引っ張るリーダーっていうか…」
「おまえを捨てたことだぞ、イルマ」
「…ほい?」
俺を捨てたのがもったいない、だと?
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