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「ハルさんは? さっきいるって聞いたけど」
ハルさんとはこのチームの副総長だ。180くらいある俺より10pはでかくて、筋肉ムキムキの2コ年上。ハルさんも血濡れになることが多いので、たいていは着替えを持っている。
…血濡れになるから着替えを持ち歩くなんて、今思えば物騒極まりないな。
「ああ、ハルさんがいたか。奥のソファで寝てると思うぜ」
「そか。んじゃハルさんに聞いてみるわ」
この倉庫には奥にドアがあって、もう一つの部屋がある。こっちよりは少し狭くて、幹部専用となっている。
俺は幹部どころかチームのメンバーですらないが、総長のジンと昔からつるんでいたし、幹部にもダチが多いので特別に許可をいただいていた。
ほかの奴らも理解はしてくれてるようだが、普段はあまり入らない。
「ハルさんに襲われんなよー」というふざけ半分の忠告に笑いながら、奥のドアをノックして中に入った。
「失礼しまっすー。ハルさんはご在宅でしょうか?」
「…残念ながらここは自宅じゃねーな。住みてぇけど」
中のソファに、煙草をくわえたハルさんが寝転がっていた。その先は灰が長くなっていて、今にも落っこちそうだ。
「わー、ハルさん、灰が落ちる。灰皿灰皿。ほれ」
ちょっと慌ててテーブルの上の灰皿を差し出した。ハルさんは寝転がったままそれに灰を落とす。
「ハルさん寝煙草は危ないでっせ。コンクリと鉄骨の建物でも火事になるときゃなりますよ。ついでに外のバイクの燃料に引火してはいどかーん」
「おまえ不良に煙草の説教すんなよ。よそでやったら喧嘩になんぞ」
そう言いながらも、笑って起き上がってくれるのがハルさんだ。不良ってもちゃんと話せば分かってくれる。
ハルさんがトントンと自分の隣を叩くので、そこに座らせてもらった。
ほんとはこのソファ、ジンとハルさん専用なんだけどね!
「いるか?」
ハルさんが煙草を1本差し出してくれたが、控え目に手を振って断る。
「や、今は吸ってないんで」
そう言えばハルさんは強制せずにしまってくれた。
ちなみにハルさんはヘビースモーカーで、1日に1箱は吸う。
「なんで裸なんだ?」
「いやぁ、実は元カノに…」
「ファミレスでコーラかけられた」「知ってんじゃないすか!」
「おまえ声でかいからな」
ニヤリと笑うハルさんに俺も笑い返す。ハルさんとはいつもこんな調子だ。人をからかうのが好きらしい。
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