2
2人に礼を言って倉庫の扉を開ける。薄暗い中には30人くらいの、だいたい十代のガラわりー男ども。俺が入ってきたのを見てみんなびっくりな顔をした。
こんだけの人数一人一人に説明すんのは面倒なので、何か言われる前に叫ぶことにした。
「こんばんはエブリワン! わりーけど水道貸してくんねーかな。元カノにコーラぶっかけられたんだけど!」
次の瞬間、倉庫は爆笑に包まれた。
「はーさっぱり! ベタベタ気持ち悪かったー」
倉庫の奥の方にある水道で、上半身裸になって頭を洗わせてもらった。身体は軽く洗った自分のシャツで拭いてベタベタを取った。
今はこれでよしとしよう。帰ったらシャワー浴びればいいし。
水道水は冷たかったけど、真夏だから問題ない。
頭を洗い終わった俺は、面白がって状況を知りたがる奴らに質問攻めにあった。
「なーなー、なんて言ってフラれたの? イルマくんみたいなヤリチンとは付き合えませんって?」
「ヤリチンじゃねーしフッたの俺だし! ん? でもあれは最終的に俺がフラれたのか?」
「ファミレスでしょ? 笑われた? 周りに注目されたっしょ?」
「あやかが店のど真ん中の席にいたから、ほぼ全員に見られたよ! 今のお前らと同じよーに笑われました!」
「ぎゃははは! あやかちゃんやるー! 傑作だ!」
「あやかちゃん最高っ、いいぞもっとやれ! ぶわはははっ」
何人かにバシバシと背中を叩かれる。いてーよ! 俺素肌だから! 素肌に不良の平手打ちはキツいぜ。
とか言いながら俺も一緒になって笑ってるけど。
もちろん笑われるばかりじゃなくて、心配してくれる奴もいた。
そういう奴はたいていチームの下っ端か新人の奴らで、控え目に笑いながらも「大丈夫すか?」と声をかけてくれた。
優しっ! だから後輩とか年下って好きなんだ。
「あ、誰かシャツとか持ってねぇ? さすがに半裸で夜道歩けねーよ」
「俺持ってねーよ」
「俺も。つか普通着替えとか持ってんの血濡れになる幹部くらいだし」
「上の人らは今総長たちとチキンレースしてっからなー」
「もう裸で帰ったら?」
「帰れるか!」
「あ、俺の今着てるので良ければ貸しますよ! 汗くさいですけど!」
「いらん! ごめん!」
その後も何人かが自分たちのシャツを貸してくれようとしたけど、丁重に断った。真夏の男が1日着た服なんて、申し訳ないが身につけたくない。
[ 13/35 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]