笑われるのはいつものこと



まっすぐ家に帰るのは諦めて、ファミレスからそう遠くないあいつらの溜まり場にお邪魔する事にした。

賑わう駅前の自宅マンションにびしょ濡れで歩いて帰るより、一般人があまりいないそこでちょっと水場をお借りして、ついでにシャツもお借りしようと考えたからだ。

あいつらに連絡はしていないし今日は行くつもりなかったが、いつも気紛れに現れる俺だからあいつらも気にしないだろう。

まぁ、この俺のカッコを見せたら、爆笑されるんだろうけど。

裏路地を抜けてフェンスを飛び越えて、人気の全くない道を歩いて行くと、錆びたでっかい扉の倉庫に到着する。

扉の前には2人の見張りがいて、俺は軽く手を振った。

「ぐっないお二人さん。イルマが来ましたよー」

「おーイルマ。つーかそれおやすみだし。…ってなにそれ!」

「ず、ずぶ濡れじゃないすかイルマさん! どうしたんすか!?」

青い短髪の奴が俺のカッコを見て声を上げ、金髪をツンツン立てた少し背の低い奴が慌てて駆け寄ってきた。

「闇討ちっすか!? どこのチームの奴っすか!? 俺総長に抗争提案してきます!」

倉庫内に走りだそうとしたそいつの襟首をつかんで止める。

「これコーラか? 派手にやられたなぁ。髪ベトベトすんし」

青い短髪が俺の髪を触って不快そうに顔をしかめた。

よし、勘違いが進行する前に説明しよう。

「不良にやられた訳じゃねーよ。これ元カノ」

2人が「は?」って顔になる。

「さっきあやかに別れ話したら、ファミレスでぶっかけられた」

一瞬の沈黙の後、予想通り青い短髪が腹を抱えて爆笑しだした。

「ぶはははは! まじかよ、あやかちゃんに? ファミレスで? はははっ、ひーっ、笑い止まんねぇ!」

「ほんとだよ。俺かっこわりー!」

あんまり豪快に笑うもんだから、こっちまで笑えてきてしまった。

短髪と2人で笑い合う。

「ちょ、笑ってる場合すか! イルマさん、相手誰っすか!? 俺が復讐してきましょうかっ!?」

なになに、そんないきり立つなって。

金髪の肩をポンポン叩いて宥める。やめとけ、相手はか弱い女の子だ。

「はー笑った。で? どーすんのそれ。洗ってく?」

「そーさせてもらうわ。ジンいるっしょ?」

「総長は隊長と単車転がしに行った。副総長ならいるぜ」

「着替え持ってそうな奴なら誰でもいいけどな」

 

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