先生はすぐに動き、峰は売人と一緒に警察に捕まった。

溜まり場のバーは潰された。

俺自身も警察から事情聴取をされ、その時に、警官に伝言を頼んだ。

「峰に、待ってるから、帰って来いって、伝えて」

「あーわかったわかった。おまえはもう終わ…」

「絶対、伝えろ」

眉間に力を込めて言い直せば、警官は今度こそしっかりと頷いた。

学園はすぐに、峰の噂で持ちきりになった。

先生のはからいで、表向きは峰は入院ということになっているが、どこから事実が漏れたのか、学園内はいつにも増して賑やかになった。

「峰くん、警察に捕まったんだって」

「クスリやってたらしいよ」

「俺はシンナーって聞いた」

「峰くんて西織くんといつも一緒だったよね」

「西織チヒロもやってんじゃないの」

「実家の力で警察に捕まらなかったんでしょ」

「こっわー」

前々から人が近づかなかったのに、今では歩くと自動的に道ができる始末。俺が現れる場所はいつもシンと静まり返り、俺が去ると口々に噂についての見解が飛び交った。

自意識過剰などではなく。

俺はすっかり学園の有名人となったようだ。

あまり興味はないが。





「さっさとこの学園から消えてよ!」

「おまえなんか生きる資格ないんだよ、この平凡!」

嫌な場面に出くわした。

目の前に、ちんまい子犬が5、6匹。きゃんきゃん吠えながら、何かを喚いていた。

ちなみに、喚かれているのは俺じゃない。俺に噛みつく子犬なんて存在しない。いても大型犬だろう。

それから「嫌な場面」と言ったのは「気分が悪くなる」という意味ではなく、ただ「めんどくさい」場面だという意味だ。

こいつらが邪魔で道が通れない。

子犬たちの標的は同じようにちんまりした子犬で、俺的には他の子犬と見分けがつかなかった。

「そ、それは言い過ぎだよ…。ぼ、僕にだって生きる資格くらい…」

「口答えするなよ!」

「平凡でなんの取り柄もないおまえなんか、いても無駄だって言ってるんだよ」

「今すぐ焼却処分されろよゴミ」

かつて俺も同じような目にあったが、ここまで具体的な言葉の攻撃はなかった。一昔前の小学生の悪口なんて、「汚い」「チビ」「わぁチビ郎が触った!腐るぅ」くらいだった。

高校生の頭脳の賜物か。時代の進歩か。

言葉の暴力は被害を増すばかりだ。


 

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