1人学園に戻った俺は、生徒寮には帰らず、そのまま職員寮に向かった。

時刻は23時過ぎ。さすがに校舎に残る教師はいないだろう。

職員寮は校舎を挟んで、生徒寮と反対側にあり、俺はその建物すら見たことがなかった。

生徒寮と比べるとこじんまりした、よく見るアパートのような建物。どの部屋かは知らない。1つずつ確認していくしかなかった。

1階の端から、扉の横のネームプレートを見ていく。ほとんどの名前に聞き覚えがなくて、先生以外の教師に興味がないことを痛感した。

最後の部屋のプレートを確認すると、唯一はっきりと覚えている「高橋朋成」の名前。迷わずチャイムを押した。

数秒たっても返事がなく、もう一度チャイムを押してみた。すると「はーい!少々お待ちください!」と、少し焦ったような声が聞こえた。

少し間を空けてから開かれた扉の向こうには、スウェットの下だけを履いて首にタオルをかけ、髪を濡らした先生が立っていた。

「えっ、に、西織!?」

「風呂?」

何故かキョロキョロとあたりを見渡して慌てる先生に、邪魔をしたかと訊ねる。

「あ、あぁ。てか、どうした、こんな時間に」

「ちょっと話があって」

そこまで言って、目で入ってもいいかと聞く。先生は少しうろたえた後、「わかった。入って」と言ってくれた。





先生の部屋は、いつも整頓されている生物室とは違い、割と散らかっていた。というより、一応片づけられてはいるが、下手くそだった。

クローゼットに入りきらない洗濯物は、畳んだ上から布をかけて隠しているように見せかけている。本棚は、本が縦じゃなく横に積み重なり、微妙な隙間ができていた。テーブルの椅子は4脚のうち1脚だけ色が違うし、キッチンの皿は洗ってあるのにフライパンは使いっぱなしだった。

「なんか、中途半端?」

「う、それを言わないでくれ…」

スウェットの上を着た先生が、苦笑いしながら椅子を勧めてくれた。

「先生っぽい部屋」

「それ、喜ぶべか悲しむべきか……」

勧めてくれた椅子に座ると、灰皿が目に入った。タバコが2本揉み消されている。

「タバコ…」

吸うの?

また目で聞くと、先生は顎をさわりながら「あぁ、まぁね」と答えた。

意外だな。

「てか、こんな時間にこんなとこ来ちゃだめだよ西織」

 

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