そうだ。

こいつはこんなナリをしているから、よく何も考えていないだの、傷つきにくそうだのと言われるが、俺からしてみれば結人はただのでかい子供。

昔から、年は同じなのに弟のような気がしていた。ほんとのこいつは甘えたで、繊細で、とても人に気を使う。そして自分の言動に自信が持てないネガティブな一面もあるのだ。

そんなことないって。

言ってやるのが俺の役目。

つか、本当にそう思うし。

「引かない……」

「……コウちゃんはいつも優しい」

笑った結人の顔はさらに痛々しくなる。なのに手は動きを止めないんだから、こいつ神経繋がってないんじゃねぇか。

「引かないって…!」

「うん、ありがとう」

もう、なんなんだこいつは! 今日は一段と自信がねぇんだな! どうしろっつーんだよ。俺にどうしろって……。

「結人……」

「え…?」

決めようとすると迷うから、決める前に勢いで動いた。

結人の顔を両手で固定し、寝かせていた頭を少し浮かせる。首を横に傾けて、結人の唇に、俺の唇を重ねた。

はい、俺は途中で目を固く閉じましたが。

1秒か、3秒かわからないが、パッと離れると結人のびっくりしまくってる顔。若干頬が赤い。

「え、コウちゃん…え?」

「引かないよ」

結人の顔を両手で固定したまま、目を見て言ってやる。

だがしかし、たぶん俺の顔も真っ赤なんだろう。

熱いし。

「俺も好き、だから」

小さい小さい声で言う。なんだこのドキドキは。マネージャーに告った時より心臓がうるさい。

「…………コウちゃん」

「……なに」

「かわいいね」

結人が真顔でそんなことを言うので、とうとう俺の顔面は沸騰した。

「なんだよもう! もっと自分に自信持てよバカ結人!」

「え、ちょっ! なんの話!?」

両手で結人の頬を軽くはたいてから、自分の顔を覆った。

恥ずかしい恥ずかしいなにが恥ずかしいってとにかく恥ずかしい。

18の男が同い年の男に『かわいい』なんて言われてちょっと嬉しくなってんじゃねーよ気持ち悪い!

さっき自分でした行動も相まって、顔を覆う両手に力を込めた。

「コウちゃん」

「…………」

応えられない。今声を出したら絶対震える。

「コウちゃん。顔見せて」

全力で拒否させていただく。

「大丈夫だから。ねぇ、お願い」

「…ッ!」



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