5
そうだ。
こいつはこんなナリをしているから、よく何も考えていないだの、傷つきにくそうだのと言われるが、俺からしてみれば結人はただのでかい子供。
昔から、年は同じなのに弟のような気がしていた。ほんとのこいつは甘えたで、繊細で、とても人に気を使う。そして自分の言動に自信が持てないネガティブな一面もあるのだ。
そんなことないって。
言ってやるのが俺の役目。
つか、本当にそう思うし。
「引かない……」
「……コウちゃんはいつも優しい」
笑った結人の顔はさらに痛々しくなる。なのに手は動きを止めないんだから、こいつ神経繋がってないんじゃねぇか。
「引かないって…!」
「うん、ありがとう」
もう、なんなんだこいつは! 今日は一段と自信がねぇんだな! どうしろっつーんだよ。俺にどうしろって……。
「結人……」
「え…?」
決めようとすると迷うから、決める前に勢いで動いた。
結人の顔を両手で固定し、寝かせていた頭を少し浮かせる。首を横に傾けて、結人の唇に、俺の唇を重ねた。
はい、俺は途中で目を固く閉じましたが。
1秒か、3秒かわからないが、パッと離れると結人のびっくりしまくってる顔。若干頬が赤い。
「え、コウちゃん…え?」
「引かないよ」
結人の顔を両手で固定したまま、目を見て言ってやる。
だがしかし、たぶん俺の顔も真っ赤なんだろう。
熱いし。
「俺も好き、だから」
小さい小さい声で言う。なんだこのドキドキは。マネージャーに告った時より心臓がうるさい。
「…………コウちゃん」
「……なに」
「かわいいね」
結人が真顔でそんなことを言うので、とうとう俺の顔面は沸騰した。
「なんだよもう! もっと自分に自信持てよバカ結人!」
「え、ちょっ! なんの話!?」
両手で結人の頬を軽くはたいてから、自分の顔を覆った。
恥ずかしい恥ずかしいなにが恥ずかしいってとにかく恥ずかしい。
18の男が同い年の男に『かわいい』なんて言われてちょっと嬉しくなってんじゃねーよ気持ち悪い!
さっき自分でした行動も相まって、顔を覆う両手に力を込めた。
「コウちゃん」
「…………」
応えられない。今声を出したら絶対震える。
「コウちゃん。顔見せて」
全力で拒否させていただく。
「大丈夫だから。ねぇ、お願い」
「…ッ!」
[ 7/7 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]