例えば、この都会の空を眺めてセンチメンタリスムに則ったら、自分はドラマの登場人物になれるのだろうか?
答えはイイエだ。ドラマには一流の監督と脚本家、演出家に最高の役者が必要だ。
自分はと言うと、三流役者どころか、売れないアイドルのマネージャー。
売れないアイドルのマネージャーっつってもアレっすよ、駆け出しのピッチピチチャンネーなんかじゃなくて、ブームメントの過ぎた三十路寸前の元グラビアアイドルっすよ。
「アンタ、どうせ若い子のマネージャーとかやりたいんでしょ?」
そらきた図星。
「なんのことかな?」
「わかってんのよバカ」
彼女とはかれこれデビュー当時からの付き合いだ。よく自分も美浜も「チェンジ!」などと喚かずここまで来たもんだ。
そりゃ初めて出会ったときはすっげー可愛かった。しかし歳を取るにつれてなんかもうどうしようもなく泣きたくなるようになった。そこそこ綺麗なのは分かっている、しかし如何せん性格がアレなモンでして。でも憎めないんだよ。誰憎めって話だよ、やんなっちゃうよ。
「あー、仕事がない。ねえ、アンタマネージャーでしょ?仕事の一つや二つ持ってきなさいよ」
持ってこれるんなら持ってきてんだよ。あーやだやだ。そろそろ自分に嫌気が差してくる頃だ。
「危険な仕事ばっかだから持ってこないんすよ、ダークネスジャパン?だって、正直俺ァ嫌なんですよ。なんかあったらどーすんすか」
「それを決めるのはアタシよ!」
またお決まりの口喧嘩だよ、どうせ俺はいい感じに丸め込む言葉もオンナを喜ばせる言葉も大人の対応だって知らないですよーだ。
「なによ、マネージャーのクセに、文句あんの?」
「マネージャーだから言えるんだよ!いい年だろアンタだって、さっさと貰い手見つけないと一生独身だぞ」
「言ったわね、アンタだってアタシと変わんないじゃない」
あーあーあーあー、なんなんでしょうかね、この無意味な言い合いは。まったくもって馬鹿げてますよね。
「オマエは俺が貰ってやるから、安心して仕事続けろ」みたいな事言いたいよね、よね、よね?
まあ俺のような超絶チキンの言い訳ばっかのクソ男には一生無理な話でして。
いっそ、自分の性格が逆転しちゃうような出来事が起きればいいのに。なんて他力本願もいいところ。結局奇跡を信じることしかできない俺は正直無神論者。じゃあナニに祈ってるワケ?って聞かれりゃ、どっかのお偉いさんしかいないんだよ。現実主義に片足突っ込んでさ、でもフィクションめいた明日を信じてるわけで。ヒッデェもんですよね。




「じゃあ好きなように仕事してくださいよ、ダークネスジャパンでもなんでも!」



なぁんて言葉に後悔したって今更遅いんですって、と頭抱えて村人から逃げるそんな俺は現在、某県三隅郡の山中にある羽生蛇村っつーなんもない村で目から血ィ流した村人に追いかけられてます。助けてください神様。