あの一件から数週間が経った。
彼女が神妙な面持ちでカレンダーとにらめっこをしている。
「…カレンダーはいつまでたっても笑わないと思うよ?」
「…こないのよ」
「何が?通販で何か頼んだの?」
「ちっがうわよ!!毎月!この辺にくるはずのアレが!こないの!!」
「そっそりゃ大変だ!って、言いたいんだけどそれって、どういうことなの?毎月来なきゃいけないものなの?」
「…慶ちゃんって保健体育の授業ちゃんと聞いてた?」
「一応は。もし心配なら宮田さんところに行ってみたら」
よく考えてみたら、子供ができたら女の人のそれは止まるっていうのを思い出して、慌てて宮田さんところに走ったのは誰にも言えないことである。




宮田医院に行くと、院長である宮田さんが「明けましておめでとうございます」といつものポーカーフェイスで言われた、しかし右手は拳を握り締め、人差し指と中指の間から親指を出すおなじみのジェスチャーをかましやがった。死んでしまえ。
「彼女、さっき来ましたが」
「えぇっ、仕事が早いよ!!で、なんと答えたんですか」
「おめでとうございますって」
「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアこの男ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!ウッウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
勢いに任せて彼の首に掴みかかるが、ポーカーフェイスは崩れない。
「牧野さん童貞みたいですよ」
「貴様首をどうされたいか言ってみろおおおおおおおおおおおっ!!」
「別にどうもされたくないんですけど、しいていえば昨日寝違えたんでそれを直していただけると幸いですかね」
この人に口喧嘩で勝ったことないのを思い出した。



「嘘ですってば、生理不順とは伝えておきました」
「そ、そうですか」
「しかし、牧野さんが想像している自体も無気にしも有らずって感じですよ。おめでとうございます」
「だからそのおめでとうございますっていうのは」
「まさか羽生蛇村にも今話題の出来ちゃった婚とクリスマスベイビーができるとは、初めて医者やっててよかったって思えたわぁ、ホントありがとね兄さん」
なぜか握手を求めてくる弟の手のひらをぴしっと叩き落とす。
「宮田さん、そこデレるところじゃありませんよ。というか、なにが心配って、生まれてきた子供が学校で「オマエはとうちゃんとかあちゃんがクリスマスというイベントにかこつけてヤっちゃった時に出来た子供なんだぜー!」みたいなことを言われていじめられないかってことですよ」
「牧野さんって、変なところで神経質ですよね」
「よく言われます」
「まあ、検査薬なりなんなり使って調べてみるといいですよ」
「そうですね」
「ちなみに、羽生蛇村で薬品が手に入ると言えばうちしかありませんが、頼みますか?それとも麓のドラッグストアまで行ってすごすご帰ってきて最終的にはうちで頼みますか?」
「なんで売上貢献の道しかないんですか、頼みますけど」
「まいどあり」



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