「とりあえずウィンドウショッピングなんてどう?」とか言って、結局凛華の行きたいお店に渋々ついて行っただけの観光旅行(ステイルくんは途中で飽きて帰った)も終わり、空はオレンジ色の光で満ち溢れている。
「ちょっと早いけど、呑みにいかない?」などと誘われたので「アルコール類は控えているんで」と断ったのに、「まあ来なさい」と半ば腕を引かれた。まったく乱暴な人だ。
「じゃあ、今度イギリスに来るときはみんなで盛大に呑みましょ!ぱーっと!」
「は?」
「あらぁ、情報係が組織内のことで外部に負けちゃいけないでしょ」
「ですからなにも」
言いかけたとたん、おもむろに腕を振りほどかれた。
なにを、と思いながらそちらに目を向けると、懐にしまい込んでいた(と思われる)手帳をパラパラとめくりながらブツブツとなにかをつぶやいていた。
「・・・おかしいなぁ、まさかあのバカ、あのこと話してないんじゃ・・・」
「ですからあのことって」
「あったあった、これだ」
すっと差し出された手帳の開かれたページに目を通す。
「天草式が、本拠地をロンドンに移すって話、上がってなかったっけ?」
整った書体で纏められたメモに、聞き覚えはなかった。
「・・・そんなの、知りませんよ」
「知らないって・・・」
「知らないものは、知らないんです!」
大声で叫んだ、ついでに涙もうっすら滲んだ、凛華は「そっか」と言って私の手を離した。なんて悲しげな顔をするんだ、この人は。
「・・・見苦しい姿を見せてしまって申し訳ありませんでした」
精一杯の他人行儀な言葉で別れを切り出して、背を向けた。
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