この縁に、あえて名称を付けるなら、腐れ縁と言ったところだろうか。
どちらから繋いだか、誰が望んだか、はたまた誰が疎んだか。
いつまでも、いつまでまっても、なにもない、ただすがり付くだけ、それ以外何もない。
ただ、そこに間違いが存在するというのなら、それはあの日その手を握ってしまったことだろう。まったく、誰を恨んでいいのやら。



「ど、どういうわけで」
「い、いや、流石にけっ、結婚は言いすぎたかなーと後悔はしている!だがな、しかしだな!」
別に深く理由を問いている訳でもないのに、勝手にしゃべってくれる、これはありがたい。
「それって、イギリスの件についても関係があるんですか?」
「べ、別にそのこととは全くもって関連性がなくて・・・」
嘘だ、先程から目が泳いでいる。
「言いたいことはそれだけですか」
「待ってくれ」
「散々待ちましたよ」
いつもの癖で、とんとん、と机を叩く彼の指先が、ぴくりと止まった。
「そりゃ、私が望んだ関係です、散々、散々待ちましたよ」
「でも、もう私は待つのが嫌なんです」
元々、繋がれるはずのない縁だった。
「どこにでも勝手に消えてくれて構いませんよ、もうなんて言われたって、揺れやしませんから」
うつむいていたから、その表情こそわからなかったものの、「そうか」と呟いた声音はどこか悲しげだった。私だって、この人を悲しませたいわけではない、でも、私だって悲しいのは嫌だ。
「じゃあ、お前さんの笑う顔も見納めってことか。と、言っても笑っちゃくれないみたいだが」
「・・・」
「なぁに泣きそうな顔しとんのよ、せっかく嫌なことから逃げられるんだ、笑うところだろう」
いつも、わざとなにも知らない素振りで人の核心を突くような物言いをする。
「それとも、まだ決心がつかないか」
「やめてください」
「じゃあはっきり、洗いざらい喋ればいいだろう。そうやってすぐ取ってつけたような言葉ばかりしゃべって、悪い癖だ」
「もうやめましょうよ」
「はぐらかすな、逃げて解決する問題じゃねえってことくらい、理解できるだろ?」
反論の言葉も見つからない。どうしろと言うんだ。私は間違っていたってことなのか。
「・・・出会いたくなんて、ありませんでしたよ」
自分の頬に、水滴が流れ落ちているのが分かった。ああ、自分は泣いているのか。しかし、何故泣いているのだろうか。
「こんな辛いなら、会いたくなかったですよ。本当に、なんで私が泣かなきゃいけないんですか、なんで、そんなに冷静でいられるんですか、なんで、なんで」
少しの沈黙を置いて、彼は「話を聞いてくれるか」と言った。
「正直、お前さんを危険な目に合わせるのは今だって、昔だって気が進まない。それに、イギリスは決して安全な場所と言い切れない」
「それは教皇代理のエゴなんじゃないんですか、仲間なら、尚更ここに取り残されるのは嫌です。それに、私だって、私だって・・・」
「お前さんのそれだってエゴだろうに。それに、俺はお前さんを仲間として見る前にその」
再び沈黙が流れる、顔を上げると、彼の顔は真っ赤で、どこかばつの悪そうな表情で頬杖をついていた。
「・・・お前さん、なんか言うことがあったりするんじゃ?」
「教皇代理こそ、はっきり言ってくださいよ、気になるじゃないですか」
何を言いたいのか、とお互いににらみ合うと、「バカバカしい」という言葉が頭に浮かび、思わず吹き出した。
「なっ、なに笑って」
「い、いや、なんかよく考えてみたら、バカみたいに意地張ってただけなんじゃないかなぁって思って」
「遅い!ウルトラおっそいのよ!」
真っ赤だった顔をさらに赤くさせて怒る彼を「まぁまぁ」と宥めた。
「で、何が言いたかったんですか?」
「つまり!お前さんのことが好きで好きでたまらないから、ずっと一緒にいたいワケだ、だけどそりゃ危険な目に合わせたくない、だから、全部終わるまで待っててくれ!かならず、迎えに来る!」
突然好きだなんて言われたものだから、なんと答えていいものかと悩んでいると、不安げな目がこちらをちらちらと気にしていた。
「・・・待たされるのは、これで最後ですよ」



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -