寮長とはかなり古い付き合いで、私が小学生のときにはすでに知りあっていたはずだ。
もともと科学者で、自分の持つ能力もあって、まあいろいろとあったわけだ。
(それにしても、この人は年をとらないなぁ)
部屋にあがったはいいが、私だけリビングで待っていなさいとのことですることもなくテレビのチャンネルを数分ごとに変えながら眺めていた。
言い分は、「あなたの能力が発動したら、ジュツシキ(ってなんだ?)が崩れて失敗するかもしれない」だそうだ。
それにしても暇だ。
本棚でもあさろうとソファから腰を浮かすと、いきなり固定電話が着信音がなった。
とりあえず、対応しといてといわれたので渋々受話器を手に取り、耳元に近付けた。
「はい、こちら水谷宅ですが家主は現在手が離せない状態なので代わりに要件をお伺いしますよ」
『誰だお前』
電話の主は男だった。
「・・・愛のメッセージは家の電話じゃなくてケータイに入れとけよ。色男」
『うるせぇぞガキ』
「で、ご用件は何ですか。なにもないなら代わりに言葉を取り繕ってやるよ」
『あとでかけなおすっつーの』
男はいらだった声音でそう吐き捨てると、ぶつりと通話が途切れた。
あの人にも、男はいるのか。なるほどな。ひとつどうでもいい情報を手に入れてしまった。
「誰からだった?」
ようやく、一息ついたようで、寮長が部屋から出てきた。
「男の人からでしたよ、ガラの悪そうな。それより、土御門さんは」
「大丈夫よ。ガラの悪い・・・、フフ」
フフフと寮長が気味の悪い笑い声をあげながらうつむく。この人はまれにこんな状態になるのだが、それほどまでにあの男がいいのか、わからない。(先ほど存在を知ったばかりだが)
「あとは、医療機関のほうでなんとかしてもらうから、ちょっと病院まで送ってくるわね。凛子ちゃんはもう時間も時間だから、自分の部屋に戻りなさい、明日、学校でしょ?」
最後に、彼の顔が見たかったが、駄々をこねる力もなかったので、おとなしく部屋に戻ることにした。

それにしても、散々な一日だったなぁ。
明日はきっと学校には来ないんだろうなぁ、大丈夫の一言くらいは言いたいのに。
ただ、目的もなにもかもを忘れて、その一言だけが言いたくて仕方なかった。



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