なんてことだ。
早々と任務をしくじった。
信じたくはないが、地面を踏みしめる足裏の感覚と、頬を撫でる風の生暖かさが「これは現実ですよ」と教えてくれる。(ありがた迷惑)
名前は覚えられてしまったし、もう駄目なんじゃないかと肩を落とす。
自分の住む学生寮に近づくにつれ、街のネオンはすっかりなくなっていた。
さて、これから家に帰って夕食を食べて、お風呂に入って、何事もなかったように過ごそう。そうでもしないと胸糞が悪い。
ああやだやだと背伸びをすると、鮮やかな金色の髪が視界に入った。
・・・おいおい、まさかここまで追いかけてくるようなストーカーさんだったのか、あの金髪は。
表情筋を引きつらせながら、くるりと後ろを向き立ち止っていると、どさりと砂のつまった袋が落ちるような、そんな音がした。
日常という、ありふれた普通に囲まれて生活をする少女は察した。
「振り向けば、なにか、知らない世界へ踏み込むことになる」と、赤の他人に手を伸ばす筋合いはないと。
それでも、それでも、
手を差し伸べればいけない、と思ったのは、なぜなのだろうか。



鞄を投げ捨て、駆け寄ると、彼の表情が少しだけほころんだ気がした。
「土御門さん!なにが・・・」
なにをしていいのやら、とその場に佇んでいると、土御門はよろよろと力なく立ち上がった。
遠くからではわからなかったが、緑のシャツにはじんわりと赤い色がにじんでいた。
「大丈夫だ・・・、死にや、しない、から・・・」
「でも・・・、でも」
なんといっていいのやら、と悩んでいると、ふいにぽんと肩を叩かれた。
振り向くと、見慣れたふんわりとした茶髪のボブカットが揺れていた。
「りょう、ちょう?」
「お久しぶりね、土御門くん。たまには、血みどろでない君とも逢いたいけど」
なぜ、この人が、彼の名前を知っているのだろうか。一つの疑問が頭の片隅で浮かんだ。
「世間話なら、あとでいくらでも付き合うから、とりあえず今は治療を」
「そうね、まああがってあがって」

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