▼毎度毎度擬人化設定


「まだ遅くはない、いいか、全力で森を走り抜けろ」「けして後ろを見るな」「戻れなくなるぞ」
ぐるりぐるりぐるぐるぐるぐる、余計なお世話が頭をぐるぐる。そもそも、この少年は誰だろう、ぐるぐるぐるぐる。
ゆらゆらゆれるその緑の瞳の中に曖昧な存在のわたしがゆれてゆらゆら。「どこにいたって曖昧なのね」「そりゃお嬢さん、貴方には決定的な意志ってモノが欠けているから」「バカを言え、私はしにたいんだ。いつだってしにたくてしにたくて」「そりゃダウトだお嬢さん」「迷いが無ければここには来れやしないのだから」
「おい、聞いているか!」
シャツの襟を後ろから引っ張られるような感覚で我に帰る。
「なによ、勝手なことを」
「望め、遅いことなどないんだ、望めば帰れる、望め、俺は君の味方さ」
「ふざけないでよ、帰りたいなら帰ってるわ。アンタなんかに指図されなくたって……」
フラッシュを焚いた様な視界に目が眩み、ふと目を閉じれば、そこには生前の記憶がイカレたフィルム映画のように流れ続ける。
「じゃあなんで、あの時自分から逝こうとしなかったのさ」
うるさいうるさい、指図をするな、正しいのはいつだって私だ。
「あらぁ、楽しそうなお話をしているじゃない」
愛らしい声に振り返る。歌うような軽やかな語り口の主は、それに相応しいふわふわしたおんなのこだった。
「私も聞きたいわ」
足元に伸びるその影に何かを隠していそうなヤツらばかりだ。キラキラした瞳がチラリと私を写した。
「私シズって言うの、ここの二つ隣の部屋に住んでるの。仲良くしようね」
「ああ、どうも」握手を求められたのですっと手を伸ばす。スベスベした手だ。ますます女の子だということを実感する。
「こっちはセーラくん。セーラー服だからセーラ。このホテルの清掃員よ」
「セーラー服のっつーのは余計だ」
まるで幼馴染のような関係だ、なんてことを考えながらぼんやりとふたりのやり取りを眺める。
「邪魔したな、ゆっくり休め」
「じゃあ私もここいらで」
ばいばーい、と手を振るシズに手を振り返す、バタンとドアが閉まった。
嵐みたいな住人ばかりだな、ここでうまくやっていけるか不安だ、なんだ、こんなところ、すぐにでも出て行ってやる。
「はたして、行くあてがあるのでございますかねぇ」
「まったく神出鬼没ですね」
たしかに孤独になったはずの密室で後ろを振り返ると鼠耳のコスプレ老人(名をグレゴリーというが多分ハンドルネームだろう)がニヤニヤ笑っていた。
「ここの住人と仲良くやっていけるものかと心配していたのですが、問題無さそうですね」
「はぁ」
「おや、反応が薄い。寂しいですね、こうも反応が薄いと。前のお客様達は突然現れるとぎゃっと悲鳴を上げて後ずさりしていたのに」
「はぁ」
心底つまらなそうな顔をしている。
「……今日はもうお休みになられたほうがよろしいでしょう」
「ああ、そうですね。おやすみなさい」
あ、またつまらなそうな顔をした。そうです、私はなんともつまらないにんげんでございますよ。



------
オリキャラ二人。シズは仕立て屋、セーラは清掃員。二人はとっても仲良し。






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -